大晦日、バタバタと忙しく、ブログを書いているヒマなどないのですが、統一教会をめぐる最近の動きが気になっています。一言でいえば、非常に婉曲的な統一教会擁護の動きです。婉曲的ですのでその危険性にはすぐには気がつきませんが、こうした動きを座視したままでは年を越す気にはなれませんので、手短に今年最後の発信をすることにいたしました。
山上容疑者はテロリストではない
統一教会擁護の動きとは、統一教会への解散命令発出にブレーキをかけるような発言、主張が出始めたということです。被害者救済法案成立後に現れた現象ですので、解散命令回避のための被害者救済法案が必要だとして、新法成立に力を入れてきた維新の会の狙いどおりの動きだともいえそうです。
被害者をほったらかしにしたまま、公の場で統一教会への解散命令に反対することは、教会員以外にはできなかったでしょうが、ほとんど実効性のない法案とはいえ、ともかくも被害者救済法案が成立したので、やおら教会擁護に動き出したものと思われます。
救済法案を年内に成立させることを絶対的な急務とした維新の会の思惑通り、解散命令を請求するか否か、その判断が下される日も間近に迫った今、解散命令は慎重に判断すべきだとの、婉曲的な統一教会擁護論があちこちの専門家から出ています。
統一教会擁護は次の2点に焦点を当ててなされています。
1.信教の自由は絶対不可侵・・・解散命令は憲法第20条にある信教の自由を侵害する恐れがある。
2.選挙渦中の銃撃は民主主義の根幹を破壊
まず「信教の自由」について。
憲法第20条の「信教の自由」は、「第三章 国民の権利及び義務」の中の一つの条項であり、国民の基本的権利を構成する権利の一つだということです。
第三章 国民の権利及び義務では、第十条から第四十条までが国民の権利について定められていますが、第二十条の信教の自由は、そのうちの一つだということ。(*第三十条は納税の義務)
信教の自由は、基本的権利の最上位概念、最上位権利として君臨する位置にあるのではなく、基本的権利を構成する下位概念、下位権利と位置づけられていることは明白すぎるほど明白です。
従って、基本的権利を侵害するような信教はその自由は保障されないことも明白です。加えて、第二十条の信教の自由の自由は無制限に認めらたものではないことも、以下引用の第二項に明記されています。
憲法第三章 第二十条
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
上記引用にあるように、信教の自由は信教(信仰)の強制を禁じています。
憲法第三章 国民の権利及び義務を見るだけでも、統一教会は、憲法違反であることは明らかです。信仰の強制、婚姻の自由の禁止、自由恋愛の禁止、財産権の侵害、教育を受ける権利の侵害、職業選択の自由の侵害等々。大量の憲法違反!
次に、民主主義の破壊について。
選挙は民主主義の根幹であり、選挙演説中に候補者を銃殺するとは、民主主義を破壊するテロであり、絶対に許すことはできない。
しかし民主主義の本義は何かといえば、民の暮らしを守る政治を行うことにあり、民主的政治を支える柱は、為政者の恣意的な政治を許さない法治による統治です。
山上容疑者はなぜ安倍元総理を銃殺したのか。統一教会によって家庭を破壊され、まともな教育を受ける権利も破壊され、財産権も侵害され、自殺を図るほどに絶望的な状況に突き落とされても、法的な救済は全く望めない現実を前に、彼に何をせよ、何をすべきだったと言うのでしょうか。
宗教法人法違反のみならず、数々の憲法違反を犯しまくっているにもかかわらず、統一教会は野放しどころか、政府の保護を受けて日本人信者の財産のみならず人生そのものまで破壊し放題を続けてきたわけです。
安倍元総理は、統一教会との関係を断ってほしいという弁護士連絡会からの要望書を開封もせずに受け取り拒否をしたことからも明らかなように、統一教会による被害をなくそうとか、救済しようという意思は毛頭も無く、統一教会の違法、無法を好き放題にさせていたわけです。
山上容疑者の伯父は元弁護士であるにもかかわらず、というよりも内情を知っているがゆえに、法的な救済には絶望していたと思われます。
犯罪組織と政府が結託している場合、犯罪被害者は泣き寝入りするか、危険を顧みずに、あるいは命を賭けて、自ら犯罪組織に報復するか、どちらかです。
山上容疑者は命を捨てて報復に向かったわけですが、どんな事情があれ、殺人は犯罪だ!と叫ぶ、単細胞な識者の何と多いことか。名前はいちいち挙げませんが、恥ずかしくないのかとさえ思いますね。
山上容疑者を殺人に向かわせた政治の機能不全、悪を悪として裁く能力すら消滅してしまっている日本政治への根本的批判なしに、山上容疑者が我々全国民に突きつけた問題を乗り越えることはできないはず。
岸田政権も、銃撃事件を民主主義を破壊するテロだと非難していますが、我が身を捨てて、銃殺に向かわざるをえなかった容疑者の心中を想像したこともないのかと、絶望感に襲われますね。というよりも、政治家の皆さんは、山上容疑者に対して、恥ずかしくないのかと問わずにはおられません。
最新の「週刊文春」には、拘留中の山上容疑者には、日本全国から差し入れが殺到しているという。伯父さんの家にまで届いているそうです。
これは単なる同情だけではなく、日本中誰も感じている、悪を悪として裁くことができず、腐敗が充満し尽くしている日本の政治に、半ば慣れさせられている我々に、悪は悪だと命を賭けて告発した山上容疑者に、多くの日本人が覚醒させられた結果ではないかと思わずにはいられません。
安倍元総理は統一教会だけではなく、ジャパンライフとの関係も指摘されていました。しかし以下の記事を見ると、安倍元総理だけではなく、父親の晋太郎元外相から続く長い付き合いだという。のみならず、自民党の有力議員が多数、ジャパンライフの広告塔として、被害者を自殺に追い込むほどの悪徳商法を支援してきたという。加えて、大手マスコミ幹部までもが!
安倍前首相、自民党幹部、新聞OBらと詐欺企業「ジャパンライフ」の“蜜月”関係
2022/07/15 月刊サイゾー
わたしはこれまで、統一教会に加え、ジャパンライフ問題まで持ち出して安倍元総理を批判するという、死者に二重に鞭打つようなことはできませんでしたが、事実を明らかにすることが悪を追放する浄化への一歩だと思い直して、年の最後に触れることにいたしました。
日本では、政治が悪の巣窟のようだという異常な現実を、まずは直視する必要があります。これほどの悲劇で年を終えることは絶望以外の何ものでもありませんが、絶望から覚醒が始まるはずです。
どうぞ皆様、よいお年をお迎えください。
なお、12月25日に渡辺京二氏が老衰のためお亡くなりになられました。92歳。心よりご冥福をお祈りいたします。