事実は小説よりも奇なり 中編の続きを書きたいと思いつつも、緊急的に気になる問題がありますので、まずはこの問題を取り上げたいと思います。というのは、岸田政権下で進められつつある理系偏重・文系潰しの愚策の具体化がすでにスタート体制に入っているからです。ただし、この本題に入る前に、統一地方選後半戦の結果やその他重要な諸問題について、触れておきたいと思います。
目次
1. 統一地方選ウラ話
まず最初は、統一地方選後半戦の結果についてです。
基本的には自民の優勢と維新の躍進という前半戦と似たような結果になりましたが、二階前幹事長の威信をかけた和歌山県の補選は、岸田総理が事実上維新に肩入れしたことも功を奏したのではないかと思います。
その肩入れとは、地方選後半の直前になされた、維新念願の大阪へのIR決定発表です。この決定は大々的に報道され、前半戦で議席を倍増させた維新にさらにスポットが当たりました。この発表で、維新はカジノ推進派だったんだと、有権者に忌避感を惹起させる効果もあるとはいえ、マスコミによる華々しい報道ぶりからは、維新への好感度を高める効果の方がはるかに大であったのは明らかです。
つまり岸田総理は、和歌山の補選を捨てて二階氏の影響力を削ぐ判断をし、思惑通りの結果を得ることに成功したということです。
とはいえ、岸田総理はその和歌山に出向いての応援演説中に襲撃されました。ひょっとして安倍元総理同様に命を落とした可能性もゼロではなく、命をかけての応援説になったかもしれません。
しかしこの事件は、選挙応援演説中に再びテロ攻撃が発生しようとは、岸田総理も含めて日本中誰も想像もしていなかった事態だと思います。この結果から考えると、わたしの推測は100%ありえませんが、この想定外の事件発生前の段階ならば、わたしの推測も十分成り立つのではないか。
わたしがなぜこんな推測をしたのかといえば、岸田総理のIR地決定発表が統一地方選の後半直前と、タイミングとしては余りにも不自然。前半戦で大躍進した維新に改めて大脚光が当たりました。
しかもIRをめぐっては、地元和歌山では以下の記事のように、階氏の影響力の低下を象徴する事態が発生していたという。地元ではIR誘致を切望していたものの、条件不足を解消できずに自ら候補地申請を取り下げざるをえなかったと事態に陥っていたという。それから8ヶ月余りの後の大阪決定。
和歌山県のIR誘致否決で大阪カジノが得る「漁夫の利」
2022年6月13日 経済界ウェブ
詳細は上記記事をご覧いただきたいですが、華々しく発表されたIRの大阪決定は、二階氏の影響力のさらなる低下を決定的に印象づける効果を発揮したことだけは、誰も否定はできないはず。
上記記事によれば、和歌山県民はIR賛成派の方が反対派を上回っていたという。それほど和歌山の経済的停滞が深刻だったということですが、その沈滞をIRで突破しようと考えていた和歌山県民にとっては、救世主たり得るのは、自民の二階氏ではなく維新の方だ!となるのも、必然の結果だったと思います。
わたしは二階氏に肩入れしようとはゆめ考えてはいませんが、岸田総理の、一見あくどさとは無縁のすすやかな印象との落差に驚愕し、そのウラの顔に焦点を当てた次第です。
つまりは岸田総理は、息子の代にまで及ぶであろうライバルを蹴落とし、自分とご子息の政治基盤を守るためには、カジノという国民生活に重大な影響を与える政策をも、いとも簡単に政争の具として利用する非情さをも持ち合わせているということです。政治家には必須の資質なのかもしれませんが、外目とウラの落差の大きさに唖然。
お陰で維新は華々しく日本初のIR選定地となったわけですが、大阪のIRは、アメリカのIR企業と組んでいる点にも注目すべきでしょうね。
岸田総理は、初のバイデン大統領との生対面には、国会を完全に無視して決定した、増税で裏打ちされた40兆円もの武器購入を手土産にしたほどに、歴代政権の中でも、対米盲従度最高の総理ですので、IRでもアメリカを喜ばせたいとの思いもあっての決定だったとも思われます。おまけに、このIRに投資される1兆円の大半は日本企業の負担。
岸田総理は、日本は完全にアメリカの属国であることを堂々と表明して、恥じる気配は皆無です。アメリカ政府認定済みのこの法案は、そののちに、国会にて事実上、事後承認となり目出度く成立しました。
2. 国賓として大厚遇された韓国大統領の訪米
一方、岸田総理が近々訪韓する韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も4月末に、6日間もの長期日程で国賓として訪米しましたが、日本の岸田総理の訪米時との扱いは雲泥の差です。
以下の動画には、ホワイトハウスで開かれた晩餐会での、超異例ともいえる尹大統領大歓迎会の様子が紹介されています。
米訪問の韓国大統領…晩餐会で“熱唱”の裏話 マスク氏とも会談…狙いは“宇宙”(2023年5月1日) – ANN
動画:韓国大統領に喝采 ホワイトハウスで「アメリカン・パイ」歌う AFPBB News
尹大統領には、バイデン大統領をはじめ、政府要人、各界要人セレブたちを前に、アメリカでは有名なポップスらしい歌を披露し、大喝采を浴びた上に、バイデン大統領からその歌を歌った歌手から届けられたというギターまで贈られています。入念に事前に準備されたシナリオに沿ってなされた、大歓待晩餐会だったことが分かります。
しかも驚いたことには、この晩餐会には、反日活動で有名なアメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんも息子さん同伴で出席して、尹大統領を歓待したという。同伴したも息子さんは韓国の大学に留学中だという。
アンジェリーナ・ジョリーさんも姿 韓国・尹大統領 米で“超好待遇”(2023年4月27日) ANN
以下の記事は、長年アメリカに在住しているらしい人物によるものですが、アンジェリーナ・ジョリーさんは中国マネーで反日的だと指摘されている映画を作ったらしい。おまけにソフトバンクも反日企業?!とのことで、ご紹介するのがちょっとためらわれますが、アメリカの映画界と中国マネーの繋がりを指摘している点で希少だと思い、ご紹介します。
ただ、わたしは映画を見ていませんので映画については触れませんが、トランプ政権の後半頃からアメリカは反中一色になっていますので、今では親中映画人はおそらくゼロだと思われます。代わって親韓へシフトか?
国連と中国とソフトバンクとアンジェリーナ・ジョリーの反日・犯罪連携 「シリコンバレーから日本を想ふ日々」(アーカイブ版)2017年02月19日
晩餐会の様子を伝えるいくつかの動画を見ると、バイデン大統領が尹大統領とその背後にいる韓国民に対して、異常なまでに気を遣っていることが分かります。
先にご紹介したANNニュースでは、この厚遇の裏には日本の存在があると強調しています。確かに、徴用工問題では韓国の歴代大統領とは異なる姿勢で問題解決を図ろうとしてきた尹大統領は、日韓関係や日米韓関係の改善強化を進めてきたことに対しては、バイデン大統領としては高く評価しているのは事実だと思います。
しかしその厚遇ぶりは、ただごとではありません。韓国は日本のようなアメリカの属国ではないことを、これでもかというほどの視覚的効果を伴って世界中に発信されています。
おそらくアメリカでは韓国人移民が激増し、在米韓国人(韓国系アメリカ人)が有権者として、あるいは圧力団体としてかなりの力を持つに至っていることが、バイデン大統領の気遣いの理由の一つではないかと思いますが、これほどの気遣いは、他にも理由があるはずです。
韓国人はアメリカにおいても韓国本国においても自己主張が強く、自分の利益、自国の利益最優先で、日本のように、米政府が一言お触れを出すと、すぐさまひれ伏して盲従するというようなことは100%ありえませんので、逆に、米政府が韓国の歓心を得るために必死にお追従をしているとしか思えません。
尹大統領が歌った後に、バイデン大統領が、その歌手から贈られたギターを尹大統領に手渡したり、日本では反日映画を作ったとの批判もあるアンジェリーナ・ジョリーさんを、韓国留学中の息子さん同伴で晩餐会に招くという、露骨なほどに見え透いた演出には、バイデン政権の必死さが伝わってきます。
訪米中に歌を披露したといえば、小泉元総理を思い出しますが、小泉元総理は、プレスリーの記念館を訪問した折に、エアーギターを奏でながら、観客なしにプレスリーの真似をしただけです。
小泉元総理も含めて、日本の総理大臣が、国賓としてホワイトハウスの晩餐会に招かれたという例はないのでは。そんな話聞いたこともありません。属国の代表を国賓として招くという宗主国はありえないわけですから、当然の結果ですね。
しかし、岸田総理も含めて、誰もその奴隷状態を惨めだとは思っていません。むしろ奴隷としてアメリカに貢ぐことに無上の喜びを感じています。この構図は、我々国民には絶望感を惹起させずにはいませんね。
国会を無視してまでアメリカに貢ぐことを最優先した岸田総理は、アメリカ盲従度最高位に位置しますが、さらにその盲従度を高めるためなのか、公明党を捨てて維新の会と手を組むことを考えているらしい。ネットで目にした観測記事ですが、その維新もアメリカ盲従政党です。
維新がアメリカべったりなのは、医療政策では特に露骨です。維新は、保健所や公的病院の廃止や縮小を政府に先駆けて断行しています。その成果が、日本一のコロナ死亡者数の更新となって出ているのですが、東京五輪より前の、コロナ感染の異常拡大が爆速渦中に、大阪でアメリカの医療関連エキスポを開催。コロナ死者数日本一を更新中の大阪医師会会長がこのエキスポのメインスピーカーとしてアメリカ企業の宣伝役を務め、関東地方でも同様のエキスポを開催しています。
公的病院9割のアメリカの医療関連企業を、公的医療機関を削減した大阪・日本にご招待して、その市場開拓に相務めているのが維新ですが、アメリカご奉仕に追随する日本のマスコミは、こうした事実を隠蔽したまま、維新のイメージアップに貢献しています。
と、この調子で書いていくと、主テーマである岸田政権が進めている理系偏重の愚を取り上げる前に、ストップせざるをえなくなりそうですが、もう少し諸問題について触れることにします。書き出すと次々と問題に気づいて、なかなかストップできません。
3. 官僚の天下りと知床遊覧船事故
ここ数日の間に見聞きした諸問題の中でも、国交省関連の事件は日本の凋落原因の一例として看過できないほどに深刻です。
民間企業「空港施設」に国交省OBの副社長山口勝弘氏を社長に昇格させるように、元国交省OBの東京メトロ会長本田勝氏が圧力をかけたという事件ですが、官僚とは、これほど恥知らずな人々なのかと、驚かされています。
空港施設の歴代社長は元国交省OBが独占してきたそうですが、大赤字を出したということで、日航出身の乗田俊明氏が初の民間出身の社長に就任。その赤字がやっと解消されたと見るや、本田氏は社長を国交OBに奪い返すことを画策したものの、乗田氏は勇敢にもその要求を拒否したというのが事件の概要です。
国交省OBがなぜ社長ポストを独占してきたのかといえば、国交省が関連企業に対して、強い権限を持っており、諸々の規制をクリアするためには、国交省OBの存在は必須不可欠だという環境が延々と続いてきたからです。
まるで中国並みではないですか。中国のIT関連企業は、アメリカ企業に並ぶ世界的大企業にまで成長しましたが、習近平体制下では、経営権は全て共産党に奪われています。中国のIT企業は、現在は、アメリカからも強い規制を受けて経営環境が厳しくなっていますが、これは別問題といたします。
国の草創期を除けば、官の権限が強い環境下では、民間企業の活力が弱体化する、あるいは十分な開花は難しいというのは、世界共通の真理だと思います。
わたしはかねてから、日本企業は官の顔色をうかがう度合いが他の先進国に比べてかなり強いと感じていましたが、今もなお、官僚が長年に渡って企業のトップを独占し続けるほどの強力な影響力を行使していていたとは、この事件で初めて知った次第です。
そういえば、郵便保険の悪辣事件が発覚する前後の頃、郵便事業でも大赤字を出すという事件が発生しました。カナダかどこかの海外企業買収に失敗しての大赤字。空港施設の国交省OBによる大赤字発生と類似の事例です。
郵便関連では総務省OBの天下り先になっていますが、時には経産省からも天下っています。官僚が天下る企業はほぼ競業が少なく、有能でない社長でも、潰れるほどの赤字にまではならないという企業ばかりです。
郵便事業では、無能社長が作った赤字は消費者に全面転嫁で、全ての料金が値上げされました。しかしこの時は、無能な官僚OBの責任は全く問題にはならず、官僚OBの天下り先としてのお役目は今現在も続行中です。
おそらく他にも同様事例は山とあるはずです。退職後すぐの関連企業への天下りは禁止されていますが、数年別の企業で勤めた後なら関連企業への天下りはOK ! だということも、今回の事件で明らかになりました。
この構図が明らかになった今、知床遊覧船KAZU1の余りにも異様な事故の背景にも、同様の構図があったのではないかと思い至りました。
この事故の最大の原因は、遊覧船の安全運行可否をチェックする、国交省関連機関の日本小型船舶検査機構(JCI)による、基本的任務の完全放棄としか思えないような、杜撰きわまりない検査放棄が原因であることは明白すぎる事実です。
JCIによる検査放棄は一つや二つではなく、国が定める検査基準全てに及んでいます。事故の最大の原因だとされるハッチが閉まらない、閉められない状況であったにもかかわらず、JCIはそれを承知で運航を認めた。あるいは、連絡手段と定められている無線機故障を放置したまま、ごく一部エリアでしか繋がらない携帯電話での代替を、JCIはその可否を検証せずに、不備のまま認めたなど、具体的な検査放棄を見ると、素人目にも信じがたい任務放棄です。他にも5,6項目の放棄が指摘されています。
この事故の検証は、なぜJCIはこれほど杜撰な検査をしたのかを、徹底的に調査することなしには、事故原因は明らかにはならず、その対策も立てようがありません。JCIの責任者を国会に呼び、なぜ検査の任務放棄をしたのかを徹底的に追求し、その責任を厳しく追及すべきであるにもかかわらず、JCIの犯罪的な任務放棄は容認されたまま、誰も責任を取っていません。
代わりに、あたかも従来法に問題があったかのような話にすり替えられ、真面目な業者に過重な負担をおっかぶせるような、法の改正がなされました。
実はJCIは昔から官僚の天下り先の一つになっているという。
沈没事故と国交省 再発防止に全力を挙げよ
2022/5/13 産経新聞
上記の産経新聞の記事は、JCIが国交省OBの天下り先になっているのではと、遠慮がちに疑惑を書いていますが、下記の共産党議員の国会質疑の記事は、国交省OBの凄まじくも浅ましい、天下りの実態を暴いています。
第179 臨時国会 2011/10/20~2011/12/9
日付:2011-10-26
【内閣委員会】国交天下り/深まる疑惑/全部で7ルート/事務次官の関与で新証拠
民主党政権時の非常に古い記事ですが、ネットでいくら検索しても、この事故に絡む天下りについては、産経新聞の天下りに関しては非常に曖昧な記事と共産党の記事以外は見つかりませんでした。
この記事は、国交相OBの浅ましい天下り実態を暴くとともに、立民批判にもなっていますので、維新以外の野党は全滅状態の中、さらに立民に鞭打つような記事の紹介にはかなりためらいがあったのですが、この異様な事故の背景を明らかにするためと、昨今のGoogle検索やネット検索の異様さをも明らかにするために、あえてご紹介することにしました。
Googleは日本政府(岸田政権)を顧客に獲得することに成功しましたので、政府に不利な情報は検索にかからないようにしているのではないかとの疑惑を招きそうな状況です。検索が規制されるのは、中国やロシアだけではなく、日本でも起こりうるはずですし、Googke以外でも起こりえます。
類似例として先にご紹介した韓国大統領大歓迎の動画も、日本に花を持たせた、その陰に日本あり!と見出しに大暑されたANNニュースばかりが繰り返し出てきます。AFPBBの動画はやっと見つけて掲載したものです。
との疑惑を指摘した上で本題に戻りますが、天下りは百害あって一利なしというのは、空港施設や知床遊覧船事故でも明らかです。検査放棄で大勢の人が亡くなった知床遊覧船事故の実態解明を進める中で、官僚OBの天下りの実態についても、国会で審議を進めていただきたい。
実はJCIの検査の杜撰さについては、裁判沙汰にまでなっていたという。
2022年05月11日
日本小型船舶検査機構が手抜き検査で訴えられる
日本小型船舶検査機構そのとんでもない実態 オカザキヨット裁判、オカザキヨットの評
上記記事は、トップ画像が非常に長いですが、根気よくスクロールすると記事が出てきます。JCIの杜撰検査はなぜ放置されてきたのか。国会でその実態を明らかにすべきです。
なお知床遊覧船事故に関する、立民の長妻昭議員による国会への質問書が見つかりましたが、これ以上実態究明は進んでいなのかもしれません。
立憲民主党 長妻昭議員よりの質問本文情報
内閣総理大臣 岸田文雄よりの答弁本文情報
官僚による関連企業への天下りは全面禁止にすべきですし、官僚は、役所での知見を活かして起業されるといいのではないですか。
なお、統一地方選では、統一教会と接点のあった議員の9割以上が当選したという。
旧統一教会と「接点あり」現職90%当選 道府県議選で無投票63人、落選25人
2023年5月3日 日経新聞
これらの議員を足がかかりに、統一教会が地方政界に影響力を行使せぬよう、岸田政権は、早急に解散命令を出すべきです。
4. 理系偏重、文系潰しの愚策 1
(1)文科省の超近視眼的政策
理系重視・文系潰しの愚策は安倍政権時代から露骨に進められてきましたが、岸田政権ではさらに露骨に、既存の文系学部や学科を廃止して理系に転換することを露骨かつ強力に促す方針が発表されました。
成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金による継続的支援 文科省
理系にあらずんば大学にあらず、というほどに超露骨な理系偏重・文系潰し策です。これほど露骨な方針が示されたのは、日本の経済力・国力の凋落と、これと密接に関係する科学分野における日本の凋落がもはや誰の目にも明らかとなったからだと思われますが、政府としても緊急的に有効な対策を打つ必要があるとの焦りもあるものと思われます。
しかし有効な対策を立てるためにはまず、日本の凋落の原因を冷静に分析し、その原因を明らかにする必要があります。これはどんな対策を立てる場合にも必須不可欠の基本のキですが、文科省が、予算成立を受けて3000億円もの巨額基金を付けて、先頃発表した上記方針には、凋落の原因を突き止めた形跡は皆無です。
取りあえず、付け焼き刃的に目前の課題に対応できればそれでいいという極近視眼的方針の羅列。しかも、極近視眼的対応は、カネでつれば何とかなるだろうという浅薄さ丸出し。新時代を切り拓く人材育成を図るという、国としての教育政策本来持つべき使命感や理念は皆無。
文科省が露骨な文系差別策 「理系なら奨学金対象」は「教育の機会均衡」に反する憲法違反 日刊ゲンダイ 4/7
文系と理系とで、奨学金で差別するとは、気が狂っているとしか思えません。
「文系廃止」の大学改革は時代錯誤だ
今後も「理系重視」で日本は発展していけるのか?
2015.9.8(火)JBPress 川島博之
川島氏は東大院を出た工学博士ですが、その専門家も文系の重要性を説いています。日本一の進学校灘校の校長先生も同様の提言をなさっていました。他にも文系軽視の愚を指摘する識者はあまたいますが、にも関わらずの愚策の敢行。
世界的に見て日本は、デジタル分野では周回遅れといわれるほどに遅れていることは、今さら指摘するまでもないほどに周知の事実です。日本政府(歴代政権)が、デジタル時代に対応した人材育成を放棄してきたからですが、これほどの手抜き、手落ちがなぜ延々と放置されてきたのか、文科省も含めてその原因を徹底的に究明する必要があるはずです。
時代の動きを完全に無視した異様な教育政策は、文科省を含めた官僚の質の劣化とも関係しているとも考えられるからです。あるいは、デジタル時代に対応した教育政策を策定しようとしたが、外部からの強い圧力で断念させられたのであれば、その事実を明らかにすべきです。
真の原因を明らかにすることなしには、日本は凋落から抜け出すことは不可能です。今回の理系重視、文系潰しの愚策を発表した文科省の政策はいったいどこの誰が策定したのか。この政策そのものが、現在の日本の凋落と低能化と知的退廃を象徴しています。
(2)アルゴリズムに必要な知
デジタルとは、わたしは何度も指摘してきましたが、人類発祥以来今日まで続く、長い長い人類史を明確に画する技術であり、過去のいずれの時代にも存在しなかった非常に特異な技術です。
人類はその発祥から近代を経て、昨今のデジタル全盛以前までは、いわばニュートン力学的な範疇で様々な工夫を編み出しながら暮らし、文明を進化させてきました。
この文明の進化、変化については、専門的な知識のない人々も容易に認知することは可能です。
例えば、運搬や移動手段に牛馬を利用していた時代から自動車や列車に変わった場合は、その変化は誰の目に明らかです。しかし現在、自動車や列車の内部で急速に進んでいるコンピュータ化は、一般人には視覚的に認知することは不可能です。
唯一その変化に気づくとしたならば、人間が運転しなくても自動車や列車が無人で走行しうることを知った時や、その場面を目撃した時です。言うまでもなく、無人運転を可能にしているのは、運転システムのデジタル化によるものです。
無人運転は、人類史上ありえなかった画期的な技術の具現化の一例ですが、これほどの大変革であるにも関わらず、われわれ一般人には、システムそのものの大変革として、視覚的に認知されることはありません。現時点では車の外観は、基本的にはデジタル以前の形状とは全く変わっていないからです。
つまりデジタル技術とは、人類史を画するほどの大変革をもたらしつつある技術であるにもかかわらず、われわれ一般人にはブラックボックス状態にあるわけです。なぜブロックボックス化されているのかといえば、デジタル技術は形を持たない、いわば抽象的なものだからです。
その抽象性とは、0と1という信号を記号化したり文字化することで、最終製品を動かすという点にありますが、その抽象性故に、従来の物理学的世界を領域横断的に拡張しつつあります。抽象性が持つ根源的な威力は普遍性にあるわけですが、デジタル技術はその根源的な威力を日々拡張しつつあります。(「ニュートン力学的世界」に関する記述を訂正しました。5/16)
ところで、デジタル技術を作動し、機能化するのはデジタル信号を発生させる半導体ですが、半導体は形こそ有しているとはいえ、目下、髪の毛よりも細い微細化競争の激化渦中にあり、台湾が世界の先頭をほぼ独占状態で走っています。
その台湾のTSMCが熊本に進出すことになり、日本では圧倒的に不足している人材育成を、まさに泥縄式に大慌てで進めつつあります。
半導体は、微細化を可能にする素材の選定なども含め、理工的要素が強い分野だとはいえ、その仕組みの考察には文系的な知も必要ではないかとの印象を持っています。
半導体はデジタル技術の基盤中の基盤ともいうべき基礎であり、まさに0と1の数字の世界ですが、ここに文系的な知が加わるならば、複合的な視点が生まれるのではないかと、素人ながら考えています。
日本人初のノーベル賞受賞者である湯川秀樹氏は、東洋(中国)史、東洋(中国)文学、東洋(中国)哲学などの、東洋・中国学研究の家系出身であったこともあり、子供の頃から東洋哲学、東洋文学の素養が身についていたそうですが、そうした文理融合の総合知が、新発見を可能にしたとも言われています。
IT分野で伸長著しい台湾の場合も、同様の伝統的な文理融合の知が自然な学びになっており、まさにデジタル時代に即応した人材育成を可能にしているのではないかと推測しています。
日本ではここ20年余りの間に、特に国公立大学の文系潰しが進んでいます。世界中どこを探しても、自国の言語、文学、歴史など、自国のアイデンティティの基盤となる学部、学科を廃止や縮小に追い込む国は日本以外にはないと断言します。
国語や歴史の先生はどこで養成しているのか、不可解ですが、国語や歴史の教育を別にしても、デジタル技術の利活用には文系的な知の考察は必須です。目下、世界的な論議を呼んでいるChatGPTの利活用は、まさに文系の領域です。
そもそもデジタル実装には不可欠なアルゴリズムも、文系的思考そのものではないですか。文科省が定義づけているアルゴリズム解釈は非常に狭く、硬直的です。
アルゴリズムって?身近な事例もご紹介 STRECH CLOUD
小学校プログラミング教育の手引 文科省(最近は、文科省のみならず、官庁サイトのサーバの場所を示すIPアドレスが表示されなくなっています。)
文科省のサイトは非常に読みづらいですが、これが最終完成形ですか、作成途中ですか?リンク先は、非常に単純化した表示になっていますので、拡大するとよく見えますが、この最新の手引きを見ても、日本の未来はさして明るくなりそうもないですね。
コロナ感染前でしたので、3,4年前になるかと思いますが、西日本新聞に、子ども向けのプログラミング教育のかなり長い解説が出ていました。理研の研究者が書いたものですが、文章も問題もものすごく難しい。論理的文章を読む能力はかなり高いと自負しているわたしでも、何度読んでも理解できませんでした。
小学生の子どもに、こんな難解な文章や問題を読ませるのか、これがプログラミング教育なのかと愕然としました。これでは、プログラミングに拒否反応を抱く子どもを増やすだけだと暗然たる気分に襲われました。
文科省が考える、非常に硬直した、教条的な論理的思考なるものを座学で教えようというのが、文科省の一貫した方針であることは過去の手引きからも分かります。最新版では、自動車やハウスメーカーやIT企業などの専門家から話を聞くという、多少は実践的な面も取り入れていますが、自動車やハウスメーカーやIT企業などは、デジタル技術を高度に応用した企業ばかり。
しかも実装されているデジタル技術は視覚的に確認することはできません。この高度な実装技術から、デジタル技術の核心を理解できるとしたら、よほど特殊に理解力のある子どもだろうと思います。義務教育は、そんな天才的な子どもにフォーカスした教育を実践する場ではありません。
国語教育の方向が異常に狭められ、国語の教科書に製品説明書=マニュアルが掲載されて、マニュアルの読み書きを学ぶという事態にまで至っています。マニュアルの読解は、アルゴリズムの実践版との皮相な考えから導入されたものだと思いますが、こんな貧相な国語能力では、非常に深みのあるアルゴリズムなど生まれてくるはずはありません。日本では、Open AI⇒ CなhatGPTなど生まれるはずもないわけです。
そもそもアルゴリズムとは、複雑に絡んだ因果の糸を解きほぐすすような側面もあり、高度な言語能力を要するものであるのは、素人ながら強調しておきます。そして時には、きわめて哲学的思考も求められる領域です。
哲学といえば、韓国では、日本でいう一芸入試で、哲学だけの入試もあるという。数年前のNHKラジオで紹介されていました。国公立大学からは哲学科を擁する文系学部が消滅させられている日本では、想像も出来ませんが、抽象的な思考力は、デジタル時代では技術習得の基礎の基礎の必須能力です。デジタル時代に至って、日本が韓国の後塵を拝するようになったのも、必然の結果だったわけです。
哲学を排除した日本では、義務教育の中で、論理的文章の代表として新聞が代表的な教材として使われるようになって久しいですが、新聞記事は事実が混乱なく伝わるように書かかれた文章で、論理的だとしても、初歩の初歩。読む人の思考力を高め、鍛えるようなレベルのものではありません。しかし新聞を教材にした読解指導は、今や大学にまで及んでいます。恥ずかしいの一言。
まだまだ書き足りませんが、今回は、ひとまずここで終わります。後日、続きを書くことにいたします。
なお、当サイトのページをTwitterで投稿した際、画像が表示されていないことに先ほど気がつきました。大きな画像表示で設定しているのですが、大どころか、小さな画像すら表示されません。