本号で「異形のAIとセック」の連載を終了する予定にしていましたが、日本学術会議法人化法案が強引に成立させられそうな危機的状況にあるとのことを知ったばかりで、急遽予定を変更することにしました。が、その後、本文に記したような事情でさらにテーマが絞られて、タイトル通りに変わりました。(トランプ大統領画像・NHK プーチン大統領画像・NHK)
1.トランプ大統領は歴史を無視
日本学術会議法人化法案が国会での審議を経て成立するとのニュースを目にして、急遽当初予定を変更して、同法案への批判を含むテーマに変更いたしました。政府が会員を任命するという旧法方式を改める内容ですので、一見すると、政府の関与が弱まるように見えますが、政府が任命する代理人が人事面に関与し、財政的には政府が直接関与する方式に変わっていますので、旧法以上に政府の関与が強められて内容に改悪されています。
日本学術会議にもいろいろ問題はあるとはいえ、知性の乏しい政治家に、これ以上日本の大学が破壊されることを座視するわけにはいきません。国会審議が始まるとこの法案がすぎにも成立しそうな状況で、時間的な余裕は残されていませんが、本題に入る前に、気になるトランプ政権の動きについて一言。
トランプ大統領の常軌を逸した政策は米国内外を混乱の渦に巻き込んでいますが、トランプ大統領の常軌の逸し度は1期目以上であるどころか、日々昂進しています。
その異常な政治手法の最大の特徴は、歴史的事実を完全に無視することにあります。
一方的な高関税攻勢の根拠となっているのは、これまでアメリカは他国の食い物にされてきたという強烈な被害者的な認識ですが、歴史的事実としては正しくありません。
アメリカを食い物にしている他国とは、製造業の拠点としてアメリカ経済を支えてきた、日本を含む世界中の多数の国々ですが、それらの国々が、アメリカから強引に製造業を奪った結果によるものではありません。
資本主義経済の自然な動きとして、より高い利潤を得るために、自国で製造するよりもより賃金の安い国や地域からの輸入にシフトします。アメリカには海外からの輸入品が大量に流れ込むことになったのは、資本主義経済の内在的メカニズムによる必然の結果です。
ただ、1980年代以降、市場万能主義や小さな政府を基本原理とした、新自由主義が世界中を覆うに至る中で、工場や大量の労働者を抱えなければならない製造業は利潤を上げるには非効率だとして、海外から安い製品を輸入するという効率化策が強力に推奨されました。
アメリカはこの経済論理で世界中を覆い、効率よく利潤を得ることができる金融資本主義体制を構築。新自由主義経済の牙城として世界に君臨するに至り、今なおその体制は維持されています。
産業界もそれまでの重厚長大型から、ITを中心にした産業構造に変わり、アメリカのIT企業も世界を独占するに至り、アメリカの経済的な支配構造はより強固になりました。
しかし、金融資本にせよIT業界にせよ、かつての製造業のような大量の労働者は必要ではなく、労働者にとっては、かつての安定した職場が消されただけで、過酷な暮らしを余儀なくされる結果になりました。
ラスト・ベルトの出現は、アメリカの新自由主義経済がもたらした結果を象徴するものですが、この結果は、効率よくカネ儲けをしたいという、アメリカの資本主義経済が世界を先導してもたらしたものでした。アメリカにおける極端な富の偏在は、そのアメリカ経済の現在地を象徴しています。
アメリカから製造業の拠点を移された中国をはじめとした国々は、労働者の仕事も収益も得ただけではなく、技術も移転され、技術力に磨きをかける絶好の機会を手にしました。しかしそれらの国々は、むりやりアメリカから製造業を奪ったのではありません。アメリカの資本主義が効率のよい利潤追求のために、自ら求めた結果です。
わたしは新自由主義が世界中を席巻していた当時、新自由主義は先進国にとっては失業者を増大させるだけだと批判しましたが、新自由主義の総本山アメリカでは、新自由主義の恩恵も世界最大規模で実現した一方、福祉政策や弱者救済策が脆弱な分、負の側面ももっとも激烈に現れました。
こうした歴史的事実を踏まえるならば、トランプ大統領の被害者的な認識に基づく一方的な高関税攻勢は、相手国のみならず、自国アメリカをも窮地に陥れる結果にしかなりません。適正な価格で輸入できるからこそ、Appleに代表されるようなアメリカ企業も、世界的分業で効率よく高収益を上げてきたわけです。
トランプ大統領もようやくこの構図に気がついたらしく、中国から輸入されるAppleのスマホには高関税をかけないというご都合主義的な方針転換を発表していますが、アメリカの中国依存はAppleだけではなく、軍事部門にまで及ぶほどに深刻度が増しています。近年においては軍事戦略の成否を握るといわれる軍用ドローンも、アメリカでは中国抜きには製造不能状態にあるからです。
2025.04.22
中国依存から抜け出せない米国の「軍用ドローン」の不都合な現実 Forbes Japan
しかもアメリカでは、共和、民主で多少の違いはあれ、時間をかけて、資金を投じて自国民をじっくり育てようとするよりも、手っ取り早く、効率よく海外から優秀な人材を引っ張ってくるという方針を国是として推進してきました。
小さな政府を縹渺する新自由主義全盛時代はこの傾向がさらに強化され、教育予算の削減を目指して教育の民営化策まで進められました。日本でもそれを真似する動きがありましたが、製造業を取り戻すにしても、それを担う人材の育成をおざなりにしたのでは、製造業を取り戻したくても取り戻せないはずです。
トランプ政権では、教育省まで解体されるという異常事態が発生しています。これでは、高度な人材育成に成功して、自力で世界の最先端を走っている中国に勝てるはずはないではありませんか。
とトランプ批判を続けてきましたが、トランプ大統領の最大の功績の一つは、製造業を失うことは労働者の雇用の場がなくなることに初めて気がついた大統領であるということです。製造業を取り戻すことは雇用の場を増やすだけではなく、国力増強にもつながることにも気がついた初めての大統領です。
ただ、トランプ大統領の手法には問題がありすぎて、世界にとってはもとより、アメリカにとっても困難な状況をもたらす結果になるだけだと思われます。
2.KGBのスパイ疑惑とトランプ大統領
ウクライナ戦争についても同様です。戦争を一日も早く終わらせようと、実際の行動に移した点は評価できますが、ウクライナの立場を完全に無視して、ロシアの言い分だけを一方的に取り入れた停戦案を平然と提示するとは、トランプ大統領は仲介者ではなく、ロシアの代理人でしかないと自覚すべきです。
2014年、ロシアはウクライナに突如侵略し、クリミア半島を占領しました。当時のウクライナはロシア寄りの大統領でしたので、全くの無抵抗。にもかかわらず、2022年、ロシアは再びウクライナを侵略。ロシアは一方的にウクライナを侵略し、領土を占領。
このロシアの度重なる侵略を一方的に容認して、奪ったウクライナの領土をそのままロシアに献呈するような停戦案を平然と提示するトランプ大統領は、プーチンの犬だとしか思えません。
トランプ大統領は、かつてロシアの諜報機関KGBのスパイだったとの話がネットに出ていましたが、いくらなんでもまさかと思ってフェイクニュースだと思っていました。しかし、ロシア奉仕、プーチン奉仕を全く変えようとはしないトランプ大統領の様子からは、ひょっとして事実だったのではないかとも思えてきました。
本物のフェイクニュース攻撃受けたトランプ、「元KGB工作員」情報駆け巡る
米メディアは沈黙、欧州メディアは「噂の拡散」事実を伝える
2025.3.15 JBPress
「KGBはトランプ前大統領を『協力者』として育成してきた」元諜報員が証言。英ガーディアン報道
Thomas Colson Feb 1, 2021 Business Inside
次の記事は、2016年の第1期大統領選の時も、KGBが組織的にトランプ氏を支援して当選に導いたことが報告されています。日本では、トランプ大統領とKGBとの親密な関係は全く報道されていませんでしたので、つい先日初めて知って驚愕すると同時に、強い衝撃を受けてています。なぜ日本では、報道されずに隠蔽されているのか。この点も、衝撃の度合いを強める原因になっています。
トランプ陣営とロシアの関係示す情報の中心的内容「証明」と
2017年3月31日 ポール・ウッド、BBCニュース、ワシントン
次の記事も、トランプ氏とロシアとの異様な関係が今なお続いていることを証拠づけるものですね。
「一律関税のはずなのに、「ロシア、ベラルーシ、北朝鮮は除外」されている」(トランプ関税が裏付けた「38年前トランプがKGB工作員に採用」情報の説得力。スパイコードネーム「クラスノフ」は真実なのか? MAG2 NEWS20 2025/4/10)
さらに、トランプ大統領のウクライナ戦争に対するロシアと一体化した姿勢は、トランプ大統領は、KGBのスパイだったのでは?との疑惑を、肯定せざるをえないほどに常軌を逸しています。しかも今なお、その関係は続いているのではないかとの疑惑さえ招きかねないほどに、両者の関係は緊密です。
とはいえアメリカでは、トランプ大統領がKGBのスパイだったという国家的犯罪者だとの証明はなされていないようです。証明されていたならば、トランプ氏は大統領の座から追放されていたはずですが、そうはなっていないからです。
それどころかトランプ氏は、大統領の権限を使って、かつてトランプ氏とKGBとの関係を捜査してきた捜査機関までをも解体しようとさえしています。とても恐ろしいことが今アメリカで進行しつつあるようにも思われます。
KGBのスパイだったとの疑惑をまとった人物を、大統領に選んだ、選ばざるをえなかったアメリカの、異常なまでの病巣の深さに慄然とさせられています。
なお昨日(4/25)、トランプ氏が停戦斡旋を進めているさ中、ロシアがウクライナを激しく攻撃し、多数のウクライナの人が殺されましたが、さすがのトランプ氏もSNSでロシアを批判したとのニュースがありました。
おそらくトランプ大統領がロシアを公然と批判した初めての投稿ではないかと思いますが、トランプ氏は、プーチン大統領に向けて「ウラジミール」と非公式的な呼称で呼びかけたことからも分かるように、両者は、我々の知らない個人的な関係でつながっているようにも思われます。
ひょっとして今回のロシアによるウクライナ攻撃は、プーチンの犬とまで呼ばれるほどのトランプ大統領のロシア拝跪イメージを、多少なりとも変えるためのヤラセ「攻撃」だったのではないかとさえ、勘ぐってしまいます。何があってもトランプ大統領のプーチン拝跪姿勢は変わらないとも思われますが、事実、その通りですね。
わたしのこのブログを先取りしたような、トランプ大統領のウクライナ批判がついさっきありました。ウクライナはクリミア半島はすんなり明け渡したのに、今頃になって返せとは身勝手だとの趣旨の発言をしていますが、徹底抗戦を貫いているゼレンスキー大統領に対しては、何時までも戦争を止めない無能者呼ばわりしてましたよね。トランプ大統領のウクライナ批判は、全く辻褄が合っていません。何が何でもプーチンの利益を守ろうとしているからですね。
3.統一教会への解散命令阻止
ロシアとの関係の異常さは誰も否定はできないほどに明らかだとはいえ、トランプ氏とKGBとの関係については今ここでその真偽を断定的に語ることはできません。しかしトランプ大統領とその政権幹部が、統一教会の強力なシンパであることは紛れもない事実として断定いたします。
ここで気になるのは、日本の石破総理とその政権幹部の多くも統一教会シンパであるという共通点を有していることです。しかも、ロシアも統一教会も、各国で右翼と呼ばれる政治家を支援するという点でも共通しています。ロシアはフランスでは最右翼のルペンを支援してきたことはよく知られている通りです。
トランプ大統領はロシアと統一教会両者から支援を受けていますが、日本の右派政治家には、今のところ実効性のあるロシアの工作は及んでおらず、統一教会の独占下にあるはずです。
その統一教会シンパである石破総理は、統一教会に解散命令を出した地裁に対して、不当な政治介入をしなかったとして、わたしはうっかり評価してしまいましたが、解散命令が実効性を発揮するのは高裁判決です。
地裁が統一教会への解散命令を出したことで、日本政府を批判しているトランプ政権幹部(トランプ大統領の意向を受けたもの)は、いよいよ実効性を伴う高裁判決に対しては、事前に阻止工作を強めてくるはずです。
目下、日米間で交渉が進められている高関税を武器にすれば、解散命令阻止も確実に実現できるはずだと、日米両政府の間では内々の了解事項になっているのではないか。
以下の記事には、石破内閣の閣僚と統一教会との関係が一目で分かるリストが掲載されていますが、石破総理は「会合出席・講演・献金」と関係が非常に濃厚です。先日訪米して、トランプ大統領から大歓迎を受けて、超異例にも直々に会談した赤沢経済再生相もこのリストに載った統一教会シンパです。
徹底追及 統一協会
石破新内閣 11人接点 2024年10月4日 しんぶん赤旗
統一教会シンパ同士で互いの功績を演出するための、秘密の取り決めをする可能性は非常に高い。その取り決めとは、高裁での、統一教会への解散命令を阻止すること。トランプ大統領は、法治はほぼ無縁、無視。日本にも同様の対応を求めてくるのは必至です。すでにトランプ政権幹部が、地裁の出した解散命令に対して非常に露骨に批判を繰り返していることからも明らかです。この批判は露骨な他国への内政干渉であるばかりか、露骨な法治への攻撃です。
石破政権にとっては、地裁で解散命令が出されたことは、政権のイメージアップにも効果的だった上に、トランプ政権との関税交渉の切り札としても非常に有効です。統一教会シンパだという石破総理自身の選択としても、解散命令阻止が本心だと思われますので、トランプ政権との闇の取引には応じる可能性はかなり高い。
トランプ関税に関してわたしがもっとも懸念しているのは、日本に対するトランプ関税が統一教会への解散命令阻止のための闇取引きに利用されるのではないかということです。4月末には、再び赤沢大臣が訪米するらしいので、この闇取引が話題になるのではと心配しています。
わたしのこの心配が杞憂であることを祈っていますが、トランプ氏も石破氏も、カネさえもらえば相手はKGBであろうが統一教会であろうが何でもいいという点では、両氏は同類らしいので心配です。
日本では、統一教会に会費などのカネを払った政治家は何人もいますが、統一教会から献金を受けたという政治家は非常に珍しい。石破氏は、その珍しい政治家のお一人です。であるだけに、心配は尽きません。
念のため強調しておきますが、わたしの心配が杞憂に終わることを切に願っています。その思いを込めてこのブログが書きました。
なお本号は、学術会議法人化法案への批判をメインテーマにする予定だったのですが、トランプ氏がロシアのKGBのスパイであったという驚愕の報道に遭遇したことで、トランプ記事が長くなってしまいました。
学術会議関連記事に関しては、稿をあらためて発信することにいたします。
日本学術会議の特殊法人化法案が審議入り 国家公安委員長「機能強化のため」と説明
2025/4//18 産経新聞