ガザでの戦闘は、やっと停戦に向けた話し合いが行われるとの新しい動きも出てきているようですが、この戦闘の端緒となった、昨年10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃はあまりにも不可解すぎます。今回はこの不可解さに迫ります。(背景画像の出典:NHK・ガザ地区“子ども1万2300人超死亡 4年間の世界紛争地上回る” ハマス幹部二人の画像の出典:朝日新聞・首謀者は車いすで地下に潜伏か イスラエルが狙うハマス最高幹部たち)
1.前例のないハマスの超異例な奇襲攻撃
ハマスによるイスラエル敵視の根底にあるのは、イスラエルによるパレスチナ圧迫が背景にあるとはいえ、今回の、イスラエルによるジェノサイドと見まがうほどの激しいガザ攻撃を招いたハマスの奇襲作戦には、国内外の多くのメディアも指摘しているように、これまでの両者間で繰り返されてきた紛争とは全く異なった展開を見せています。
ハマス自らがイスラエルによるジェノサイドまがいの激しい反撃を招いた、イスラエルへの奇襲攻撃はハマス単独では不可能であり、何らかの外部要因が介在したことは明白です。
その外部要因を明らかにすることが本号のテーマですが、イスラエルとパレスチナの、2000年以上もの長い歴史と、第二次大戦後の歴史が絡む複雑な背景事情にまでは遡りません。今ここでは、イスラエルによる残虐な反撃を招いた、昨年10月に突発したハマスのイスラエルへの、空前絶後の奇襲攻撃そのものに焦点を当てることにいたします。
イスラエルのガザ侵攻の端緒となった、ハマスによる奇襲攻撃を振り返ってみると、これまで何度も何度も繰り返されてきた、イスラエルとパレスチナの紛争とは明確に異なった状況下で実行されたことは明白すぎる事実です。
ハマスの今回の奇襲攻撃が前例のないものであることは、欧米を中心に国内外のメディアも明確に指摘していますが、防衛研究所の下記のレポートには、その超異例さが非常に明確かつ分かりやすく分析されています。
ハマスの前例のない対イスラエル攻撃
防衛研究所 地域研究部アジア・アフリカ研究室主任研究官 西野 正巳 2023 年 10 月 12 日
また、以下の朝日新聞オンラインには、ハマスという非国家による軍事攻撃とは思えないような、高度で多彩な攻撃手法が駆使されていたことが映像で紹介されています。
ハマスはどう壁を越えたのか 動画で見る「異例づくし」の10・7
朝日新聞 2023年12月7日
前例のない攻撃手法で、前例のない大打撃をイスラエルに与えた以上、イスラエルからも前例のない規模で激烈な反撃を受けることは、ハマスとしても十分に予測できたことは言うまでもありません。つまりハマスは、ハマスやガザの住民にも大きな被害が及ぶというリスクを承知の上で、奇襲攻撃を仕掛けたということです。
その理由としては、近年、アラブ諸国が次々イスラエルと関係改善を進め、国交樹立する事態にまで立ち至っていることに、ハマスが危機感を覚えたからだと指摘されています。防衛研究所のレポートにもその指摘がありますが、不明な点もあると次のように分析しています。
今回の、前例のない大規模攻撃は、最初で最後のものとなろう。ハマスが今回の攻撃を行った理由は既に述べたが、自らに対する大きなリスクを冒した理由には、不明瞭な点がある。要は、今回の攻撃をハマスが実行した見返りが、イスラエル軍の反撃によるガザ地区での大きな被害の発生に加えて、①ハマスのガザ地区における実効支配者としての地位の喪失、②西岸地区とガザ地区におけるハマスの大幅な弱体化、③ハマスの幹部やメンバー多数の無力化(つまり、イスラエル軍による殺害)、であることをハマスは実行前から分かっていたはずであり、それでも敢えて今回の攻撃を行った理由は、まだ不明である。(ハマスの前例のない対イスラエル攻撃)
上記レポートでは、今回の奇襲攻撃によってもたらされる結果は、ハマスにとってはマイナスでしかないことは明白だと指摘しています。ここまで明確な指摘は欧米のメディアでもみかけませんでしたが、確かに、防衛研究所の指摘通りだと思います。
得るものはゼロどころかマイナスでしかないにもかかわらず、ハマスはあえて、超異例のイスラエル攻撃を仕掛けました。なぜなのか。もっとも知りたいところですが、上記レポートは、その理由は不明であると記しています。
その深い分析力からするならば、その理由についても何らかの言及があるはずですが、なぜか不明だという。何かはばかられることがあて、「不明」だとしているのでしょうか。そこで素人ながら、ハマス奇襲をめぐる謎を推測することにいたします。
国連のUNRWAがハマスを支援していることは、以下の報道をはじめNHKなどでも報道されていますので、世界中に知れ渡っている事実のようです。
「パレスチナ支援」避けられぬハマスの関与 国連機関との“協力関係”も…背景にある構造的問題とは
FNNプライム 飯山陽 2024年1月3日
上記の記事にある写真を見ると、ハマスが拠点にしているトンネルとは、まるで地下要塞とでも呼びたくなるほどの、大規模で堅固なものであることに驚かされます。国連には、パレスチナ支援専門のUNRWAという組織があるとのことなので、UNRWA=国連からの支援金が、ハマスの地下要塞の建設や維持費にも使われているのは事実だろうと思われます。
しかし、UNRWAがハマスを支援していたとしても、UNRWAだけで今回のハマスによるイスラエル襲撃が実行できたかといえば、それは不可能だと思います。UNRWAだけの支援であれば、従来のような、攻撃レベルに留まっていたはずです。
非常に用意周到に奇襲作戦が準備されていただけではなく、多彩な戦法をスピーディに次々と展開し、初のイスラエル領内までの侵攻をも成功させたハマスの手際のよすぎる攻撃は、実践的な戦闘訓練を受けた結果によるものであることは明らかです。
2.ロシア・プーチンとハマス
実はハマスは、以下のBBCの記事によると、2020年12月から、奇襲攻撃を実行した2023年10月7日までに、4回にわたって大規模な軍事訓練を実施していたという。
【検証】 ハマスはいかに10月7日のイスラエル攻撃を準備したのか
2023年11月29日 BBC
上記記事から4回の軍事訓練実施日を抽出します。
1回目 2020/12/29
2回目 2021/12/26
3回目 2022/12/28
4回目 2023/9/12
ハマスはこれらの軍事訓練の様子を動画で公開しているという。上記記事は、ハマスが公開した動画を使って、訓練と実際の奇襲攻撃との類似点を検証しているのですが、BBCの検証結果によると、事前になされていた軍事訓練とほぼ同様の作戦が10月7日の奇襲攻撃で実施されたとされています。
ただ注目すべきは、軍事訓練実施の時期です。3回までは全て12月の年末近くです。12月はイスラム教徒にとってはもっとも重要で最大のお祭り、犠牲際が行われる月ですが、3回目までは、毎年この犠牲祭が行われた後に、軍事訓練が実施されてきました。まさにジハードの訓練だったのでしょう。
しかし4回目だけは9月12日です。この訓練日の変更は、緊急的な要請によるもので、奇襲攻撃に備えた訓練であることは明らかです。これ以外の解釈が可能であれば、どなたか教えていただきたい。
問題は、巨額の資金なしには不可能な、これほど大規模で手のこんだ実践さながらの軍事訓練を支援したのはどこかということですが、イランやロシアの名前が上がっています。イランもロシアも支援したはずですが、軍事訓練が唐突に3ヶ月以上も前倒しされたことからすると、ロシアが強力に支援したことはほぼ間違いないはずです。
「ハマスの後ろにロシア…」そしてワグネルの名も…ゼレンスキー大統領元最側近が語る【報道1930】
ハマス戦闘員、奇襲攻撃前にイランで訓練
米当局者によると今回の攻撃に備えた特別な訓練だったかは不明
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 2023年10月26日
4回目の前倒し訓練は、イスラエルとハマスとの間でかつて例のない大戦闘を勃発させて、ウクライナ戦争の戦況をロシアに有利に展開することを狙ったものです。しかも、奇襲攻撃は、ロシアの大統領選前に是が非でも実施せよとの強力な要請があったはず。
結果、ハマスのイスラエル襲撃直前まで、世界中の目は、ロシアに侵略されたウクライナの戦場に向けられていましたが、ハマスによるイスラエル奇襲は、世界中の目をウクライナからはぎ取り、ガザへと一極集中させてしまいました。
その後の展開は、ロシアの狙い通りに進行中です。
先日実施された、茶番そのものでしかないロシアの大統領選挙では、予定通りプーチン氏は高支持率を得たという。強力なライバルをこの世から次々と葬り、批判者は立候補すらさせないという状況下で実施される選挙など全く無意味ですが、この無意味な選挙といえども、もしも戦況が悪化しロシアが敗北したり、敗北が濃厚な状況下で選挙が実施されたならば、プーチン氏は高支持率は得られなかった可能性はあります。あるいは、プーチン退陣の声すら出てきたかもしれません。
しかし、プーチン氏は、大量の自国民の犠牲も厭わないハマスの絶大な協力を得て、ウクライナの孤立化にひとまずは成功し、波乱もなく大統領茶番選挙も終わりました。ハマスは、ロシアのこの茶番選挙結果にも間接的に協力したことになります。
ガザをめぐっては、国連はもとより、世界中でハマス支援の声が圧倒していますが、ハマスが、ウクライナ戦争をロシアの勝利に導くために、イスラエルへの奇襲攻撃を実施したという事実を直視するならば、まずはハマスを厳しく非難すべきではないと思います。
イスラエルのネタにエフ首相も、ハマスが前例のない大規模攻撃を自国に対して実施することは重々承知していたことは間違いありません。ハマスによる前例のない大規模攻撃には、イスラエルとしても文字通りハマス壊滅に至るほどの前例のない大反撃で返す心づもりでいたはずです。
大戦闘になり、ハマス殲滅に成功すれば、汚職疑惑に揺れているネタにエフ首相の地位も危機から脱し、むしろ英雄として崇められる可能性さえ出てきます。しかも、ロシアのプーチンが、ウクライナで散々、残虐非道な破壊、殺戮を繰り返ししていますので、イスラエル軍が仮に残虐非道な殺戮や破壊攻撃をしても、プーチンの前例に習って貫徹できるはずだと考えていたのではないかと思います。
国内外の識者、論者は、ハマスの奇襲攻撃に気づかなかったイスラエル政府や軍がミスを糊塗するために、ハマス殲滅作戦を行っていると論評していますが、ハマスの奇襲攻撃をイスラエル政府や軍が知らないはずはありません。ネタにエフ政権は、これをハマス殲滅のまたとない好機だととらえていたはずです。
事態はその方向に進行中ですが、11月に大統領選挙にあるバイデン政権からの批判や圧力もあり、途絶えいたて停戦合意に向けた話し合いも行われるようですので、ハマスが存命する可能性はありそうです。
ハマスは、パレスチナ自治政府の無能な統治に比べるならば、学校や病院を作ったりと、民生支援の施策を行い、国民の支持は高いそうですが、予算の基本は国連からの支援だという。イスラエルに出稼ぎする以外の大半の国民には働く場所もありません。パレスチナの人々は何十年もの間、国連からの支援金で日々暮らしています。ハマスはその支援金の配分役を担っているにすぎず、パレスチナ人自らが生活費を稼ぐ場を生み出したり、提供したことはありません。
イスラエルによる絶えざる攻撃、監視の中では、産業らしい産業が育つことはおろか、生まれることすらないとは思われますが、国連の資金を使って建てた学校では、自立して生活する知識を教えず、非常に偏狭に解釈したコーラン以外は教えていないのではない。パレスチナの子どもたちは、幼い頃からジハードの戦士になることを教え込まれているのではないか。
わたしは今回初めて、イスラエルとガザ地区の拡大地図を見ましたが、イスラエルの領土が圧倒しており、パレスチナの領土は非常に狭い上に、飛び地になっています。にもかかわらず、イスラエルはさらにパレスチナ領土に入植地を拡大しつづけています。
イスラエルのような身勝手で残酷非道な国は、ロシア以外にはないと断言します。
パレスチナ問題の経緯 パレスチナ子どものキャンペーン
2000年以上も前の歴史を持ちだしても正当化されるはずはありません。第二次大戦後、イギリスが二枚舌、三枚舌を使ってパレスチナ、イスラエルの対立のタネを作ったにせよ、長い年月に渡って、国を持たない暮らしを余儀なくされてきたユダヤの人々にパレスチナの一部が割譲されたということには、ユダヤの人々にとっては画期的な出来事であり、パレスチナの人々には心から感謝すべきではありませんか。
にもかかわらず、さらに自国領土を拡大しようとは、イスラエルの強欲さには批判以外にかける言葉はありません。ただ今回のハマスのイスラエルへの奇襲攻撃は、ロシアを助けるために、ロシアの要請を受けて実施されたもので、かつての紛争ではありえなかった多数の子どもたちを含む、多数のパレスチナの人々が殺されています。ハマス自らが招いた殺戮です。
加えてハマスは、ロシアによるウクライナの破壊やウクライナの人々の殺害にも手を貸しています。ハマス幹部はロシアから大金を贈られていたのではないか。パレスチナのプラスになることはゼロどころか、マイナスでしかない奇襲攻撃。ハマスはその責任を取って解散すべきではないですか。
領土侵略を続けるイスラエルに対しては根本的な批判は絶対不可欠ですが、今回の超異例な奇襲攻撃の結果に対しては、まずはハマスが責任を取るべきです。
なお、バチカンの教皇フランシスコがウクライナに対して、白旗を掲げる勇気が必要だとの驚くべき発言をしたと報じられていますが、教皇は、ウクライナはロシアの占領を受け入れるべきだと進言したことになります。信じがたい発言です。ローマ教皇はいつから侵略者ロシアの支援者になったのでしょうか。教皇もロシアから大金を贈られたのでしょうか。まことに失礼な推測ですが、教皇の発言は、それほどありえぬ推測をも招きかねない異様なものです。教皇自らが、カトリックの権威を貶めるような発言をされるとは、世界の混沌はさらに深まりそうです。