「葦の葉ブログ2nd」より転載
1. コロナと医師会
国会での菅総理の初!の就任演説、続くコロナ対策を中心にした国会審議、やっと政治が動き出したという感じです。菅政権発足後、菅政権に対する批判は山のように出ていましたが、批判は批判のままで具体的な政策にはなかなか結び付かいないという状況が続いていました。わたしは断片的にしか国会審議は聞いておりませんが、コロナ対策に焦点が当てられていたこともあり、国会や野党の存在意義もあらためて認識させられたようにも思われます。
しかし、非常に不可解かつ納得できないのは、病床不足解消のための具体策が与党はもとより、野党からも提案がなかったことです。野党は医療逼迫の原因は政府、菅政権の無策にあると批判しています。その通りですが、今も病床不足で自宅待機を余儀なくされたコロナ感染者が、治療を受けることができずに自宅で亡くなるという事例が日々相次いでいます。
この悲惨な事態は、ただ批判するだけでは解消されません。非常に貧しい国で、病院も医師や看護師の数も少ないというのであれば、すぐさま解消することはできないでしょうが、前号コロナ拡大と日本の病院事情でもご紹介しましたように、日本は医療機関の数は大小合わせて世界一です。
にもかかわらず、入院できずに亡くなる方が、コロナ、非コロナいずれの患者さんからも相次いでいます。昨日のニュースだったか、救急搬送中の患者さんが、20数か所もの病院から断わられ続けて、ついに搬送渦中に亡くなられたという。断わられた理由は、コロナ対応のための病床確保で病床の空きがないとのことだったという。
患者さんご本人にとってはもとより、ご家族にとっても無念の極みだったと思いますが、20数か所もの医療機関から断わられ続け、挙句の果てに、搬送渦中での死を余儀なくされた患者さんを、眼前にせざるをえない救急隊員の方々にとっても、非常に過酷な状況が続いているわけです。
与野党の政治家の皆さん、特に即政策実行の権限をお持ちの与党の政治家の皆さんは、こうした過酷な状況をどこまで認識しておられるのか、非常に疑問に思います。前号では、菅政権は病院への協力金を用意していることもご紹介しましたが、この金額では不足で協力できないのか、あるいはお金ではなく、医療関係者すら感染を恐れて協力しないのか、あるいは理由は別にあるのか、協力する病院が一向に増えない理由は不明のまま。
野党からもこの点についての指摘も提案も出ていないようです。金銭的な補償が少ないのであれば、補償額を増やす。感染を恐れているのであれば、国は感染しにくい環境整備のための物資を十二分に確保、提供する。あるいは別に理由があるのであれば、その理由を明らかにして即座に対策を採る。世界一の病院数を擁していながら、入院できずに自宅や搬送途中に亡くなるという事態の異常さを、政治家の皆さんはどこまで認識しておられるのか、はなはだ疑問です。
異常さを認識しているのであれば、即座にその異常さ解消のために動くはずですが、座して死ぬに任せるという状況が続いています。それどころか、緊急事態下にもかかわらず夜の飲食に興じておられる議員さんたちも後を絶ちません。
中国はお手本にはしたくはありませんが、昨年のコロナの爆発的感染拡大時には、中国政府は急ごしらえでコロナ感染者受け入れのための病院を作り、必死で感染拡大を抑え込もうとしてきました。イタリアも昨年の感染爆発時には体育館のような広い施設を使って、臨時の病院を作りました。また、コロナ対策は何もせずに放置してきたトランプ政権下のアメリカでも、ホームレスの感染者収容のために、トイレもない低劣な環境のものとはいえ、臨時の施設を作りました。これはおそらく現場の判断で作られたもので、感染者は治療も受けられずに、ただ死を待つ場所となった可能性は非常に高いので参考にはしたくはありませんが、いずれの国も既存の病院が不足している場合は、臨時の病院なり施設を作っていますが、日本ではそうした動きは皆無に近い。
ただ日本でもごく少数ながら、以下のように受け入れの努力をしている病院もあります。
大手民間病院「コロナ患者」積極受け入れの秘訣 医療法人グループの徳洲会、伯鳳会は収益も確保
東洋経済 2021/01/29
徳洲会病院では、駐車場にプレハブの仮設病院を数棟作ってコロナ感染者を受け入れているそうです。神奈川県も昨年のクルーズ船での感染者受け入れもあり、プレハブの仮設の病院を建設したという。広い敷地が確保できない場合は、可能な規模での仮設病院を建設すれば対応できるのではないか。医療機関全数の8割を占める民間病院の大半が、コロナ診療には非協力的であるという状況を転換することが、目下の医療逼迫を解決する最良、最短の方法です。
福岡市の高島市長は医師会に直接協力を申し入れてるそうです。昨日西日本新聞に出ていましたので、医師会がどう応えるのかはまだ分かりませんが、埼玉県では、県の医師会と全面的に協力してコロナ対応に当たっているそうです。大野埼玉県知事のtwitterでの報告を偶々目にしたのですが、医師会が全面的に協力している所もあると知って、ちょっとホットしました。
以下の埼玉県のサイトに詳しい対策が出ています。埼玉県では今も感染拡大は続いているようなので、その対策は必ずしも十分な効果は上げていないのかもしれませんが、体制構築には非常に参考になるはずです。
発熱外来PCRセンターの設置について 埼玉県
新型コロナウイルス感染症対策として、埼玉県医師会と郡市医師会と連携協力し、全ての郡市医師会に発熱外来PCRセンターを設置することで、検査体制の強化を図りました。
PCRセンターでは、保健所を介さず、直接病院や診療所など地域の医療機関から感染の疑いがある患者を受け入れることができるほか、PCR検体の採取を集中的に行うため、迅速な対応が可能になります。
また、PCRセンターに発熱症状などの患者を診察する発熱外来の併設も促進しています。
これまでコロナ対策では医師会の存在感は非常に薄いという印象でしたが、埼玉県では医師会が積極的に対応に当たっており、郡市医師会にPCR検査所を設け、その住所も一覧公開されてます。医療が逼迫しているにもかかわらず、ほとんど動く気配が感じられない医師会には、医師としての使命感が希薄なのか、あるいは保健所一点張りの政府からは医師会は排除されているのかとも思っていましたが、そうでもないということのようです。
福岡県は小川知事が入院中。コロナとは発表されていませんが、コロナに似た肺疾患のような症状のようで心配です。ただ福岡県医師会は昨年までは日本医師会の会長を出していましたが、政府(安倍政権)の力(抑圧)が強すぎたせいか、医師会の声は全く聞こえてきませんでした。
加えて以下の記事では現場からの声として、医師会そのものがコロナ対応では一貫して消極的であったとの指摘がなされているそうです。
日本医師会の消極姿勢で「コロナ患者のベッドは最小限」の構図 NEWSポストセブン 2021/02/01
ということであれば、積極的にコロナ対応に協力している医師会は例外的で、大半は消極的だということになります。しかしこの状態を放置したまま、医療の逼迫を叫ぶのは余りにもおかしい。医師会の自主的な判断に任せていたのでは協力をえられないわけですから、政府は日本医師会に対して、直接、協力要請をすべきではないですか。
医師や看護師さんたちが犠牲になったのでは患者さんたちの命も救えないわけですから、医師や看護師さんたちの命を守ることは最重要課題です。医療者の安全を守りながらコロナ患者を救うためにはどうすればいいのか、政府は医師会と協議して、民間病院の協力を得る体制を早急に整えるべきではないですか。
ただその前に、我々の側にも深い反省は必要です。コロナ感染者が出た病院で働いている医療者とその家族に対する異常な排除、排斥が平然と行われてきました。常軌を逸した医療者への排除には強い批判もなされ、その反省から医療者へ感謝しようという運動が生まれ、今では一時のような医療者への排除はなされてはいないと思いますが、感染の危険にさらされながら治療に当たっている医療者には心から感謝することなしには、医師や看護師の皆さんにその使命を果たすことを求めることはできないはずです。
医療逼迫になすすべもなく傍観している感のある政府を見るにつけ、コロナ禍という前例のない危機下では、政府よりも住民に身近な地方自治体の方が、はるかに有効な対応をなしうることを改めて思い知らされました。
西日本新聞の記者コラムの「目立たないけどやってる県」という記事で、コロナ感染による死者数の最小県として1位島根県、2位鳥取県の事例が紹介されていました。これらの県は人口も少なく、人の往来も少ないので感染者が少ないのは当然だと考えられがちですが、さにあらず。徹底した防疫体制が採られていたという。
一つは、徹底したPCR検査である。感染者が判明するとその立ち回り先を調べ、濃厚接触者以外にも対象者を広げてPCR検査への協力を求める。幅広い検査で投網をかけ、感染拡大の芽を摘み取る作戦だ。
もう一つは、感染者は無症状、軽症でも原則入院させていること。これが死者数を抑え込んでいること。
(西日本新聞「時代ななめよみ」)
人口の多い大都市では難しいかもしれませんが、感染拡大の初期なら可能だったかもしれません。しかし感染拡大の抑え込みに成功している地方自治体よりも、抑え込みに失敗して、自衛隊の派遣要請をする知事の方がマスコミの脚光を浴びるという不健全な風潮も、コロナ禍をさらに増幅しているのではありませんか。
その効果があったのか、昨日実施された北九州市議選では、維新の会が0から3に議席を激増させるという珍事が発生しています。抑え込みに失敗したはずなのになぜか、維新の会の吉村大阪府知事はマスコミの脚光を浴びますので、やってる感が強力にアピールされて効果は抜群!0から3へ。自民党はもたつき感や弛緩(ゆるみ)しすぎ感の強力アピールで6議席も激減。これは有権者の正直な反応でしょうが、日本の未来はさらに暗くなりそうです。
政治家の倫理観や使命感の希薄化は医師の使命感の希薄化とも無関係ではないようにも思われますが、その日本の現在を象徴するような珍事が勃発しました。世間を唖然とさせた、コロナ対応を巡って対立が激化した北海道の旭川医科大学の内紛です。同大は国立大学だそうです。
内紛の詳細については触れませんが、医師としての倫理観はもとより、大学の長としての倫理観の欠如の実態を、つまりは知の衰亡がとめどなく進行しつつある日本の現在を、吉田学長がその身に体現して世間に知らしめたような事件ですね。
2. ワクチンとデジタル
わたしは国会中継はほんの短時間、車の走行中に聞くぐらいですが、その断片的な時間に、驚くようなやり取りがありました。ワクチン接種にも、接種に関する様々な情報登録の活用は不可欠ですが、何と厚労省は、そのワクチン専用のシステムを、従来通りの各自治体任せの手法で作ることにし、各自治体ではワクチン接種に備えて、すでにシステム作りの準備を始めているという。当然、専門業者に依頼してのシステム作りです。
ところが、つい最近、このシステムは統一モデルを国が作って、各自治体に提供することになったという。この方針転換は、ワクチン担当大臣も兼務することになった河野行革大臣の指示によるものなのかどうかは不明ですが、この急な方針転換で各自治体も業者も困惑しており、現場に混乱をもたらしていると、確か共産党の女性議員だったかが、批判していました。
わたしはこのやり取りを聞いて、コロナ禍で露呈した日本のデジタル化の遅れの深刻さを誰も理解していないことに驚きました。国と地方のシステムの統合、規格の統一はデジタル庁発足後のことであり、発足後もすぐにできるわけではなく、やはり相応に時間はかかりますので、今は現在のシステムを使わざるをえないわけです。しかしワクチン接種は全国で実施されるので、システムの統一規格化は、費用逓減のためにも、その後のデータ収集や検証作業のスムーズな進行のためにも大前提となすべきであり、不可欠です。
しかし厚労省はシステム作りは各自治体任せにしたとのこと、信じられません。国のデジタル化はデジタル庁の役目だという縦割思考は、国のデジタル化への最大の障害です。各省庁や各部署で、費用の低減、作業の効率化を目指して可能なかぎりのデジタル化の方法を考えるのは当然の責務ではありませんか。
ただ、国のシステムも各自治体のシステムもてんでんばらばらの無政府状態に近い現況のシステム下では、国が提供するモデルシステムが提供されても動かない可能性もゼロではないと、素人的には危惧します。しかし、国もどんなシステムでも動くような極力汎用性の高いモデルを作り、各自治体も専門業者の力も借りて、モデルシステムを既存のシステムに組み込む方法を考えるべきではないですか。
ワクチンは接種したら終わりではなく、ワクチンの種類、接種回数(これらはワクチンの在庫管理に即直結する情報)、被接種者の住所や性別や年齢などのマイナンバーから取得可能な個人情報に加え、既往症や基礎疾患の有無や現在の体調などの情報、さらには、接種回数ごとの体調の変化などもワクチン接種関連の情報として登録管理する必要があります。
そしてこれらの情報は即座に国で把握する必要がありますが、各自治体任せのシステムでは各自治体ごとのデータ収集に膨大な手間と時間と莫大な費用がかかります。そもそもデータの収集そのものが不可能かもしれません。となれば、悲惨な結果になりそうです。
ここは、何としても国の統一モデルでシステムを構築すべきだと思います。それを批判して、システムは各自治体に任せるべきだというのは、ワクチン接種データ収集の内実を理解していないからだと思います。厚労省が各自治体に対してワクチン接種に対応したシステムを作るように指示したこと自体が大間違いです。いったい誰がこんな指示を出したのでしょうか。
システムは国の統一規格モデルにすべきですが、その際、QRコードを使うと接種実施側にも、被接種者にとっても作業は非常に軽減できるのではないかと、素人的には考えます。QRコードでOKならば高齢者でも簡単に手続きができますが、スマホを持たない人への対策は別途考える必要があります。しかしそれほど難しくはないのでは?と素人頭は考えてます。
なおQRコードは、日本のデンソーウェーブが発明したものだそうですが、デンソーは無料で開放して世界中に普及しています。2014年に、デンソーウェーブのQRコードの発明で欧州の発明家賞を受賞したそうですが、マスコミはほとんど報道していないのでは?わたしはつい最近、ネット検索で知ったばかりです。国内でも多数の賞を受賞していますが、QRコードが日本企業の発明だとは、日本人はほとんど知らないのでは。
ところで、このQRコードを使えば、国民への給付金も簡単に支給できるはずです。昨年の支給時のように膨大な事務量に忙殺されずに、マイナポイントのようにカードを介すれば、世帯ごとではなく国民一人一人に支給は可能だと思います。あるいはQRコードを使って買い物券を発行すれば、貯金に回らずに嫌でも消費に回るはずですが、個人番号が付されていますので、非課税者や低所得者に限定して支給することも可能なはずです。
マイナポイントのカード登録は余り進んでいないようですが、10万円給付にカードを使うことにすれば、大半の人が登録するのではないか。子供や赤ちゃんは親が登録する。全国民に個人番号が付されているので重複受給という事態は発生しないはずです。ホームレスなどのカードも銀行口座も持たない人々には、ご本人や支援者を介して直接給付することにすれば、事務量も膨大にならずに、全国民に支給できたはずです。
安倍政権では、カード決済を促すためにQRコードを使ったマイナポイントを実施したのでしょうが、この決済手段は国民への支援金給付にも応用できたはずです。誰もそれを考えようとはしなかったのでしょうか。想像力の貧困さに暗澹たる気分に襲われます。
ヘッダー下の空白について
当サイトのヘッダー下部分が空白になっていますが、これについては次号で説明いたします。