日韓防衛の自立度対比

日韓防衛の自立度対比

2022-12-20

防衛予算確保のために増税を決めた岸田総理に対して、国民や野党のみならず、自民党内からも批判の声がわき起こっていました。岸田総理は批判の嵐の中でも、国土防衛のための予算は、次世代にツケを回す国債ではなく、現役世代が負担すべきだとして増額分は税を充てるべきだとの方針を貫いています。防衛予算そのものが国民の大きな関心を呼ぶというのも珍しく、初めてのことではないかと思いますが、ここにも日本の宿痾ともいうべき重大な問題が潜んでいるように思います。(アイキャッチ画像の画像はMemeplexにて作画)

1.防衛予算と対米関係

防衛予算のための増額を打ち出した岸田総理の方針でもっとも不可解かつ理解不能な点は、東日本大震災の復興税の一部を防衛予算の不足分に充当することを、いささかの躊躇もなく発表したことです。

その後、復興税を1%下げて年限を10年延ばすという、見かけだけは変えたものの、事実上、復興税からの充当という当初の方針は変わっていません。復興税を1%下げて年限を10年延ばすということは、復興を10年遅らせるということにほかならず、被災地復興を軽んじるものだとの批判は免れがたい。

現下の情勢を考えれば、国民は防衛強化には賛成するはずだとの見立てなのでしょうが、現下の情勢に対して、日本の防衛の現状はどうなのか。これまで巨額の税金を投じて、米国製兵器を大量に購入してきましたが、それら既存の兵器では対応できないのか。対応できないとするならば、何がどう不足しているのか。あるいはまた、これまで購入してきた兵器の選定には問題なかったのか。などなど、問題点を具体的に洗い出す必要があるはずです。

これまで日本は、型落ちした米国製兵器の在庫処分先と見なされいて、大して役には立たない、不要な兵器を大量に買わされてきたと指摘する専門家もいます。のみならず、言い値で米国製兵器を買わされてきたことも周知の事実です。さらにその上、納入された兵器の代金を前払いで実値以上支払っていても、過剰支払分の払い戻しすらしてもらえないという、通常の商取引きでは、世界中どこにも存在しないような異常なまでの隷従を強いられています。

こうした隷従下で購入した兵器は、当然のことながら、米国では製造停止になるケースも多く、自衛隊では不具合が生じても部品が供給されず修理ができないので、購入してさほど年月が経たないうちに使用停止を余儀なくされる場合も珍しくはないという。

兵器はどれも、民生分野から見ると極度に高額ですが、その超高額製品を購入するというのに、専門家による製品の吟味はほとんどなされずに、政治家(トップの総理)の独断(=米国の選定のまま)で決めるというのがこれまでの対米隷従の実態でした。

ちなみに独立国家では以下のように、兵器調達には軍事の専門家による透明性をもった厳しい審査があるという。

兵器調達の際、「政治的中立と透明性」が厳格に求められることだ。これは選定過程において友好国の兵器であれば、平等に審査して要求性能と評価試験の結果などに基づいて採用が決まるというものだ。

もはや「西側の兵器工場」 韓国防衛産業が好調な理由

上記記事は、後にご紹介しますが、フィンランドとエストニアでの兵器調達に関する基本方針だという。おそらく、独裁国家以外の民主的な独立国家では似たような方針で兵器調達がなされているのだろうと思います。

日本政府も一方的な対米隷従関係から脱し、情勢に応じて必要な兵器を、日本自らが専門家を核にして選定し、適正な価格で購入するという、自立した対等な日米関係を新たに構築するならば、防衛予算を増額せずとも(増税せずとも)、現下の情勢にも対応しうる防衛力の増強は可能なはず。

今回の防衛予算の増額は防衛3文書という日本の防衛計画の改定とセットで提出されていることからも明らかなように、従来の防衛指針にかなりの変更を加えたもので、その変更に対応するための防衛予算の増額となっています。

本来ならば、国会で審議を尽くし、我々国民もこの変更の中身を共に吟味すべき重大な問題を孕んでいます。従来のような米軍任せで我関せずでは済まないというのが変更の核心になっていますので、我々国民もある種の覚悟をもってこの新方針に向き合う必要があります。

論議を尽くして、国民の総意としてこの新方針が決定されるならば、必要な財源は、国債というステルス性財源ではなく、個人、法人ともに国民誰もが防衛を意識せざるをえない、防衛のための増税で対応すべきだと思います。

増税で対応という方針を示した点では岸田総理を評価しますが、増税の中身が悪すぎます。法人税の増額は当然だとしても、見かけ上は国民個人に対しても1%の防衛増税はしたものの、復興財源とのバーター取引きです。防衛増税の必要性が全く論議(公の場での国会審議)されないままでの決定です。

これでは、国民の理解も賛成も得られるはずはなく、直近の世論調査では、岸田内閣の支持率は過去最低。被害者救済法案成立後の世論調査では、ほんのわずかとはいえ支持率が上がりました。あの役には立たない法案でも、有権者の多くはないよりはましだと思ったのか、支持率上昇に寄与したようです。

しかし防衛予算の大幅拡充が表明された後の世論調査では、非常に厳しい評価が下されました。防衛予算の大幅拡充と、日本の防衛を大幅に変更することを示した防衛3文書の改訂という重大な政策変更が、国会審議を経ずに(=国民に政策変更を吟味する機会も提供せずに)、閣議決定で決められたという、政策の中身の重大さと、政策決定へのプロセスの軽さ、安易さとのギャップが国民の反発を招いた最大の理由だろうと思います。

安倍菅政権時では、国会を通さずに閣議決定だけで重要法案や政策が決定され、実行に移されるという手法が堂々と使われていましたが、岸田政権でもその手法が踏襲されています。

岸田総理がこれほど急ぐのは、1月には初の訪米でバイデン大統領との会談が予定されていることと密接に関係していることは言うまでもありません。日本の総理大臣が訪米する際には、必ず朝貢品を献上しますが、その献上品は内々で米国政府から示されているはずです。米国政府のご所望品を携えての訪米です。

岸田総理にも当然のことながら、献上品の中身については事前に内示されているはず。それが防衛予算の大幅拡充と、防衛3文書の改訂です。国会で審議していたのでは1月の訪米には間に合いません。それどころか、法案が廃案になる恐れすらあります。

しかし日本国民の支持がなければ、岸田政権の存続は不可能であり、アメリカの日本に対する期待が実現しないことも明らかです。

2.韓国は世界の兵器工場へ

ここで日本政府とは対照的な、韓国の対米防衛姿勢をレポートした以下の衝撃的な記事を紹介いたします。

もはや「西側の兵器工場」 韓国防衛産業が好調な理由
伊藤弘太郎 (キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員)
増永真悟 (慶應義塾大学SFC研究所 上席所員)
WEDGE ONLINE 2022年11月30日

偶々見つけた記事ですが、一読後、しばし言葉が出ないほどの衝撃を受けました。一言でいえば、かつての日本と韓国との、家電業界を舞台に勃発した下克上と全く同じような現象が、世界の兵器分野、防衛産業でも着々と進行中だという、未知の世界と遭遇させられます。

すでに攻略済みのトルコやインド、エジプト、イラクなどの新興国に加え、ポーランドや、ノルウェー、フィンランド、エストニアでも韓国製兵器の調達が進んでいるという。さらに豪州も韓国製の兵器を大量に購入することを決定。のみならず、目下、韓国の防衛産業を代表するハンファが、豪州で大規模な兵器工場を建設中で、西側諸国への兵器供給を担う予定だという。

ポーランドでは将軍が直々に、大勢の部下帯同で韓国で開催された兵器見本市を視察。その性能を現物で確かめ、購入交渉に臨んだという。日本では、兵器の現物確認なしどころか、兵器の特性もほとんど知らない、軍事素人の総理の一言で決まります。全てはアメリカ政府のご所望どおりに決します。日本の政治家は頭を使わずとも務まりまそうですね。

その日本を尻目に、韓国の防衛産業は「西側の兵器工場」としての地位を着々と築きつつあるようですが、その背景には、米国の同意があるのは当然のことながら、単なる同意ではなく、米国政府の方針として、防衛産業での米韓パートナーシップの強化を進めつつあるという。米韓がこれほど緊密な関係を深めているとは、日本ではほとんど誰もしらないはず。というよりも、知らされていません。

<昨年9月15日に米英豪の間で安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」が締結された2日前(13日)には、「米豪韓国防研究・開発・試験・評価分野の3カ国協力体系に関する約定」が締結された。>とのことですが、韓国の大規模な兵器工場が豪州で建設されているのも、当然のことながら、米国も含めた米豪韓の連携強化を背景にしたものです。

日本のマスコミでは「AUKUS(オーカス)」は報道されたものの、米豪韓の防衛分野での連携強化とその具体化がすでに始まっていることについては全く報道されていません。少なくともわたしはその種の報道には全く接しておらず、これほど重大な事実が報道されていないという衝撃とも相まって、上記記事を読んだ時の衝撃は、いや増しに増したわけです。

韓国の防衛産業は、言うまでもなく米国兵器の国内生産を通じて技術供与されたものだと思いますが、韓国流のカスタマイズを加えることで、顧客獲得に成功したという。日本の家電の技術移転を受けた韓国企業は、韓流カスタマイズ製品に変身させ、世界の家電市場を席巻することに成功しましたが、防衛産業でも全く同様の手法で世界市場進出に成功したという。

韓国企業は、輸出候補国の国情を徹底的に調査して、その国情に合わせて兵器をローカライズ(現地化)して、売り込むという手法を駆使してきたという。本家米国やドイツ製の兵器は機能が過剰で高度過ぎて使いにくいとのことですが、韓国製は過剰な機能がなく、使いやすく、当然価格も安い。売れるのは当然だともいえそうです。何だか、かつての日本の家電と韓国製との違いとそっくりですね。

唯一異なっているのは、米国は韓国の防衛産業発展の後押しをしているのに対し、日本の家電は韓国製に駆逐されて世界市場からは閉め出されてしまったまま、かつての家電に代わる有望な新製品を見つけられないまま、今日にまで至っています。

ではなぜアメリカは、韓国の防衛産業の後押しをするのか。アメリカは、韓国が守備範囲とする兵器とは次元を異にしたもっと高度な兵器の開発に集中する方針だからです。旧来型の兵器の生産は韓国に任せ、米韓共同で世界の防衛産業市場を掌握しようという魂胆のようです。

韓国製兵器は、ロシアと戦っているウクライナにも輸出されているという。当初、韓国では、喜劇役者出身の大統領に何ができるのかというような、その出自を軽んじるような世論もありました。また、ゼレンスキー大統領が韓国国会で演説した際にも、大統領や首相というトップをはじめ主要な政治家はオンライン会議をボイコットしました。

韓国政府要人によるこの露骨なウクライナ無視の対応は、中国やロシアとの経済的な結びつきを守ることを最優先した結果であることはいうまでもありません。韓国は伝統的に、理念よりも実利優先の国ですので、この姿勢には与野党問わずブレはありません。

この伝統的なDNAを受け継ぐ韓国は、日本のように米国に隷従することなく、まずは自国の利益最優先の方針を貫きつつというよりも、国益最優先を貫くことで、米国と対等の関係で国防の要となる防衛産業でも連携を強め、韓国にとっては実のある(経済的にも潤う)国益増大にも成功しています。

記事では<韓国は「西側の兵器工場」>となっていますが、おそらく輸出対象国はさらに拡大して「韓国は世界の兵器工場」にまで至る可能性は非常に大きいと思います。

ウクライナに冷淡な対応を続けてきた韓国政府は、ウクライナにも武器を供与しているらしい。武器生産でパートナーとなったアメリカの指示によるものだと思われますが、この選択が韓国にとって有益だとの判断によるものであるのは明らかです。

対して日本は、ただひたすら米国に貢ぐ一方です。憲法9条の呪縛が解けない限り、日本で新たに防衛産業を展開することは難しいものの、憲法9条の呪縛は対米隷従と一体化したものとして続いてきた面もありますので、憲法9条の呪縛からの解放は、対米隷従から脱し、日本と米国とが対等な関係を獲得しないかぎり不可能だろうと思います。

しかし憲法9条の改憲をすぐさま実現することは簡単ではありません。また日米関係を対等なもにすることも一朝一夕に実現するものではありません。まずは、目前の急を要する課題から始めるべきだろうと思います。

その端的な実例は、沖縄をはじめ、日本各地にある在日米軍基地では、有害物質が垂れ流し状態になっていることです。日本国民の健康と生命が日常的に危険にさらされていますが、この異常な状態に対してすら、日本政府は米軍に抗議の一つすらできません。

米軍(米国政府)は、自ら投棄したこの危険物質を除去しようともせず、除去費用すら出そうとしません。そもそも有害物質を垂れ流にしているのは、無害化にかかる費用を出したくないという信じがたい理由からですので、米軍にとっては、日本人は犬猫以下。命ある生き物とすら見なされていないと考えざるをえません。

こんな隷従状態を放置したままでは、米国と対等な関係など築けないのは当然です。米国に対しては隷従的に貢ぎ続ける(巨額の税金を米国に捧げ続ける)ことが、日本政府の最重要課題だと見なしてきた、日本の歴代政権の姿勢を根本的に改めないかぎり、日本の安全など守れるはずはありません。

対米関係においても、日本は韓国以下。統一教会ごときにまで、歴代政権は隷従をつづけ、信者から巻き上げた巨額資金を韓国に貢ぎ続けてきたわけです。戦後の日本は隷従の歴史そのものではありませんか。

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