被害者の救済にはならない「被害者救済法案」が10日には成立するらしい。岸田政権が、立民や維新の会の要求を一部取り込みながら、今国会中での成立を急いでいるからです。その背景には、統一教会に対する元信者や家族からの被害相談が事件後激増した結果、それらの相談から派生するであろう教団に対する大量訴訟から、教団を守るための法律=「救済法」を緊急的に成立させる必要があるからです。またこの新法が、鳴り物入りで実施された質問権行使にどのような影響を及ぼすのか、これも大きな警戒点です。
1.政府案は大量訴訟のガード役
この法案が被害者にとっては悪法でしかないことは、前号被害者切り棄ての救済法案にて、政府案概要も参照しつつ、かなり詳しく解説しておりますので、未読の方は是非ご一読ください。
安倍元総理の銃撃事件後、霊感商法対策弁護士連絡会や政府が設置した臨時の相談窓口、さらには常時相談可能な窓口になった法テラスなどに、統一教会被害者による相談が激増しています。
相談事例の大半は裁判になると思われますが、その数はかつて例のないほどの大量なものになるはずですし、被害者の多くは献金の返還も要求しているはずです。こうした裁判が大量になされるならば、統一教会は破産に至る可能性はきわめて高い。
そこで、裁判を起こしにくくさせ、仮に裁判になっても、被害者家族への献金返還は極小額で済むようにして、統一教会への打撃を極力小さくするような法案を、大量の裁判が始まる前に緊急に成立させる。これこそが岸田政権に課せられた喫緊の使命であったのではないか。
「被害者救済法」という衣で国民の目を欺きながら、余りにも異様で露骨な統一教会救済法案を、岸田政権がこれほど急いで成立に突き進む理由は他にはありえません。
余りにも異様で露骨な、統一教会救済法案そのものである政府案の正体については、前号被害者切り棄ての救済法案に詳しく解説しておりますので、こちらで再度ご確認ください。
加えて、被害者救済法案が最初に提案された事情からも、この法案は被害者救済の衣をまといながら、その内実は統一教会救済を狙ったステルス法案であることが分かります。
事件後、統一教会被害者救済法案を早急に制定させることを提案したのは維新の会でした。維新の会は、現行の宗教法人法では、何か問題が発生した場合、処罰法としては解散命令しかないので、解散命令の手前で対処できる法案が必要だと、新法制定の必要性を訴えていました。
事実、素人判断ながら、この新法によって、質問権行使が解散命令にまで進むことを阻止する可能性も非常に大きい。現行法では解散命令しかないという現状を変えるために、つまりは解散命令を回避させるために緊急的に新法制定が必要だという維新の会の主張が、救済法案の正体を物語っていますね。
もちろん、解散命令を出すには高いハードルをクリアする必要があり時間がかかりますので、すぐにも被害者を救済することができる新法が必要であることには異論はありません。被害者救済に尽力してきた弁護士連絡会も新法制定の必要性を訴えています。
この提案に立憲民主党が加わりましたが、法案は立民が作ったとのことですので、条文化したのは立民だったのかもしれません。いずれにせよ、立憲民主党も救済法案の早期成立を訴え、犬猿の仲と見なされていた維新の会とタッグを組んで救済法案策定に動き、自公政権も動き出し、政府案が作られました。
現在確認できる政府が作成した救済法案は、前号被害者切り棄ての救済法案でご紹介した政府案概要のみ。政府案が国会に上程された今も、官邸のHPには統一教会に関する情報は皆無です。
国会上程に際し、緊急成立を目論む自公政権が政府案に加えた修正については、報道を介して伝えられてはいるものの、基本は全く変わっていません。
政府案はマインドコントロール規定がないことが最大の問題点だとされています。確かにこの規定がないので、献金の違法性が非常に狭められる結果になっており、統一教会にとっては非常に有利になっています。
しかし政府案の危険箇所は、マインドコントロールだけではなく、多岐にわたっており、統一教会守護を狙った政府案の危険度は、修正後も全く変わっていません。
前号被害者切り棄ての救済法案では、統一教会守護のみを狙った政府案の危険な内容を、分かりやすく9項目リストアップしました。リストアップしたその9項目を、あらためてここに再掲いたします。
1.規制対象が法人に限定されている。仮に、宗教法人格を持たない統一教会の関連団体が禁止行為(不法行為)を行っても、処罰対象にはならないとう、大ザル法!
以下、法人を統一教会と読み替えてください。
2.その法人が不法な方法で勧誘して巨額な寄付や巨額な物品の購入を強制しても、当人が困惑せずに、法人の求めに応じた場合は処罰の対象にはならない。
3.ここでマインドコントロール規定の有無が重大な意味をもってくるわけです。例えば、山上容疑者の母親のように、家庭を破壊し、子供たちを困窮に追いやっても、当人が進んで巨額献金を続けている場合は、次の4のケースのような場合を除いては、基本的には、処罰の対象にはならない。
4.除外規定は、本人が無資力(お金がない)場合。
5.請求を困難にする様々な条件をクリアして、仮に家族が返還請求をして認められた場合でも、「全額ではなく扶養請求権等の範囲内に限定される」ということ。成人したりして親の扶養からはずれた家族には返還されない。扶養下にあっても、扶養年限(18歳)までの分しか返還されない。例えば、裁判時に請求者が15歳の場合は、残りの3年分しか返還されない。しかも生活や養育に必要な金額を算定して、その分しか返還されない。山上容疑者の場合は、成人していますので請求することはできない。
6.裁判をする場合、「契約ごとに禁止行為であるか否かを認定しなければならない」。寄付が30回、50回となれば、一つ一つ、不法行為であるか否かを30回、50回と認定を繰り返さなければならない。膨大な時間を要するだけではなく、裁判費用も膨大なものになりますね。勝てば裁判費用も相手側に払わせることになるはずですが、この煩雑さは、裁判阻止を狙ったものであることは明々白々。
7.さらには、寄付をすることが『必要不可欠』であることを告げる」という要件付き。この強制語なしに寄付をさせた場合は、処罰の対象にはならない。マインドコントロール下にある信者は、自ら進んで寄付をしますので、問題なし。OKよ。「現行の消費者契約法等よりも旧統一教会の被害者救済は困難になるという」正体見たり、政府案。
8.「自発的に借り入れや、住居を処分して献金しても規制できない」、ここでも「困惑」(マインドコントロール)の有無が規制の有無のカギを握っています。住居についても居住している建物は規制の対象になっていますが、当人が住んでいない建物を売って献金することは規制の対象にはならない。また、家族が死亡して手にした死亡保険金は、寄付規制の対象にはならない。
(そういえば、統一教会では死亡補家金をごっそり献金する話はよく聞きますね。山上容疑者の場合、父親の死亡保険金や祖父=母親の父親の遺産についても、全て母親が献金しており、3人の子供たちの相続権=財産権も完全に侵害されていますが、新法では、成人している子供たちは、相続分すら返還請求できなくなるのかしら?・・・転載時に追記)
9. 「個人から法人に対する寄付のみを対象」、余り例はないかもしれませんが、会社や団体などからの寄付は無制限。仮に個人資産を資産管理団体などで管理している場合(かなりの大金持ちですが)などは、その団体からの寄付だとすれば無制限でOK.
宗教2世の方が、政府案が適用されると、親が数千万円から億単位の寄付をしていても、子どもが返還請求をしても数万円ぐらいしか返ってこないとの懸念を示し、政府案は被害者救済にはならないと批判していましたが、上記のような、統一教会救済を目的にした法案ですので、ある意味、当然の結果だと言えるわけです。政府案の最大の狙いは、統一教会が受ける経済的な打撃を最小化することにあるわけです。
さらには、日本人女性信者の大半は、合同結婚式を介して貧窮にあえぐ韓国人男性と結婚させられるケースが圧倒的に多い。こうしたケースの体験談に共通しているのは、韓国人の夫が暴力をふるう、生活費を日本人の妻が工面させられる(せざるをえない)という2点です。
統一教会の日本人信者は、巨額の献金や物品購入以外でも、韓国人に貢がされているということです。日本人が韓国人の食い物にされているにもかかわらず、日本政府は被害者を救済するどころか、日本人を食い物にしてきた統一教会を救済するステルス法案を成立させようとしています。
2.内閣法制局は本当に「法の番人」なのか?
政府案には、統一教会救済を狙った恐ろしい内容が、法律用語を駆使して巧妙に条文化されているわけですが、これほど露骨にかつ素人(一般国民)には理解しがたい用語や言い回しを使った条文案を作成したのは、統一教会かその意を汲んだ自民党議員だろうと思います、
しかしこの悪法を背後で、プロ中のプロである内閣法制局が強力にバックアップしていたことが、4日放送のNHKの「日曜討論」で明らかになりました。
4日の日曜討論については、以下のNHKの記事でも紹介されています。
旧統一教会被害者救済法案 自民“会期内成立” 立民“修正を”
2022年12月4日 NHK
公明党の高木政調会長が、「配慮義務」規定は内閣法制局の判断によるものだと披露。高木氏は、法制局のお墨付きだと視聴者にアピールしたのでしょう。わたしもこの放送を聞いたときには、内閣法制局が指導したのであれば、仕方ないのかとも思いました。
しかし内閣法制局以外の法律の専門家からは、禁止規定にしなければ規制の効力を持ちえないとの指摘もなされています。事実、法案概要を見ると、被害者を切り棄てて、統一教会守護が露骨な政府案です。
この政府案は、公明党(創価学会)にとっても恩恵の大きい法案だと思いますので、自民党と協力して法案策定に尽力したものと思われます。加えて内閣法制局が強力にバックアップ!
統一教会を温存させるための政府案作成に手を貸した内閣法制局は、本当に公正な「法の番人」なのか。問わずにはいられません。
野党や国民の批判を受けて自公政権は、配慮義務を怠った場合、法人名を公表するとの手直しをしたようですが、一般企業に対してならばかなりの抑止力になるはずですが、もともと悪評高い統一教会のような法人に対しては、ほとんど抑止効果はないはずです。
悪徳国家として世界中に知れ渡っている北朝鮮は、日々悪行を重ねて世界中から非難を浴びていますが、ほとんど効果はなく、国がつぶれる気配もありません。統一教会の場合も同様だろうと思います。
では、禁止にするとどういう不都合が生じるのか。生じるとしたならば誰にとっての不都合なのか、といえば、統一教会を筆頭にした、マインドコントロールによって巨額の献金を巻き上げようとしている、法人であることは言うまでもありません。
禁止規定が設けられると、違反した場合は明白な違法行為と認定され、処罰=解散命令の対象になりますが、禁止規定の導入に反対した内閣法制局は、不法行為の犠牲となった被害者を救済するよりも、不法行為を犯した法人=宗教法人を守ることを最優先していることになります。
つまり、内閣法制局の判断は、本心では統一教会を守護したいという自民党の思惑とも一致します。さらに言うならば内閣法制局の立場は、統一教会の思惑そのものの代弁者かもしれないとの疑念すらわき起こってきます。
北朝鮮のお役目の「3.ミサイル連射の効果」でもご紹介しましたように、アメリカの連邦議会が統一教会に関する徹底調査を実施した結果、アメリカでは、政治家のみならず、官僚たちも統一教会による攻略の対象になっていたことも判明しています。
「田舎のセックス教団」と見られていた旧統一教会の野望を40年前に見抜いていた、米「フレイザー報告書」の慧眼 News Socra(集英社オンライン)小西克哉
税逃れ、メディア戦略、ビジネス展開…旧統一教会がアメリカで行ってきた巧妙な政治工作 2022.10.26 News Socra(集英社オンライン)小西克哉
日本でも政治家のみならず、官僚組織への攻略や工作がなされていたと考えるべきだと思います。つまり、マインドコントロール手法を使った献金の禁止を認めなかった内閣法制局は、統一教会の傀儡ではないかということです。
とすると、これほど恐ろしいことはありません。
安倍政権時には、検察すら官邸の傀儡にさせられてしまっていますので、内閣法制局にも同様の改造がなされても不思議はありません。
いずれにしても、内閣法制局は「法の番人」ではなく、「統一教会の番人」であり、「自公政権の番人」だというべきでしょう。という疑惑を招くほどに、内閣法制局は、法的な公正さに欠けすぎた法案誘導役を果たしています。
内閣法制局には法的公正さが完全に欠如してることを示す端的な例は、民法では取消権消滅期限は20年と定められているにもかかわらず、救済法案での取消権は10年で消滅する規定になっています。
取消権規定とは、被害を認知してから取消権を行使しうる期限を定めたもの。民法の20年は、被害を認知してから20年以上経つと取消権は消滅。救済法案では10年経つと消滅。悪徳宗教法人にとっては、民法を適用される方が圧倒的に不利。
統一教会のような悪徳宗教法人を相手では、騙されたと気づいても、すぐさま取消権行使に踏み切ることが難しい場合が多いはずで、10年ぐらいあっという間に経ってしまいます。
民法の取消権が20年保証されているにもかかわらず、なぜ救済法案では半分の10年にしたのか。法的整合性は全くありませんね。統一教会などの悪徳宗教法人への罰則を軽くしようという、非法律的な配慮丸出しの超偏向規定です。
統一教会守護政党の維新の会に煽られて、悪法を急いで成立させるべきではありませんと訴えるつもりでしたが、与野党が合意して明日8日には衆議院で審議入り、10日には成立する予定らしい。
維新の会の浅田議員は、先週の国会審議で、統一教会を反社勢力と言った岸田総理に対して、その根拠を示してほしいと要求。総理が被害者の存在を例に挙げたもののそれには納得せずに、根拠も示さずに反社勢力と呼ぶべきではないと批判。唖然としました。
維新の会と自公政権の本心は、解散命令を回避しつつ、世論の批判をもかわすことのできる、ステルス性統一教会(悪徳宗教法人)守護法案の成立を、緊急に実現させたい、その一心であり、10日には、その狙い通りに悪法が成立する予定です。
法案を詳細に批判したこのブログは法案阻止には貢献できませんでしたが、統一教会に対する自公政権の今後の対応をチェックする資料にはなるはずです。また岸田政権が、解散命令を視野に発動したとされる、統一教会に対する質問権行使が、この新法によって阻害されるのか否かも全国民が注視する必要があります。
この新法が、想定される大量裁判から統一教会を守る強力なガードとなるだけではなく、質問権行使が解散命令にまで進むことを阻止する鉄壁のガードとなるのか、法案成立後にこそより警戒度を高め、その行方を注視する必要があるはずです。
ちなみに公明党にも統一教会と関係を持った議員がいたとのこと。創価学会の威力が下降気味だと言われる中、公明党までもが統一教会の助けを必要としているのでしょうか。