統計不正の背後事情

厚労省で統計不正が発覚、目下大問題になっていますが、非常に不可解なことには、その背景や原因については誰も核心には触れよ炭都物語・表紙うとはしていません。勤労統計不正が始まったのは2003年からだと報道されていますが、この時期は、小泉構造改革真っ盛り。小泉政権は2001年4月に発足し、2006年9月まで続きましたが、この間、聖域なき改革が断行されたのは周知の通りです。小泉構造改革は多岐に渡って行われましたが、社会保障費の伸びも大幅に抑制され、毎年2000億円超の減少、5年間で1兆円超の社会保障費の削減達成に成功しました。後にその歪みが出ることなど全く想定もされぬまま、当時はその改革策は高く評価され、小泉元総理の改革手腕も称賛に包まれていました。

しかし個々の社会保障費は、まさに勤労統計によって決まりますので、そのデータとなる賃金データを減額すると、社会保障費は簡単に抑制することが可能となります。勤労統計不正が始まった時期が小泉構造改革渦中であったことは、偶然ではありえず、毎年2000億円超の社会保障費減額という、構造改革の目玉の一つであった大目標達成のために編み出された窮余の秘策(不正)だったのではないか。それ以外に、この時期に突如として勤労不正統計が始まった理由も動機も考えられません。

専門家の中にも背後事情に気づいている人もいるはずです。両者の相関は、誰が見ても余りにも明白。両者の関係に気がつかない方がおかしい。しかしマスコミを介しては、これほど明白な事実も報道されません。野党もこの渦中にいたわけですから気がついていないはずはありませんが、この不正事件を安倍政権批判に利用するために、現政権の責任に転嫁しようと、この明白な事実については完全無視を貫く方針なのでしょう。小泉進次郎氏もこの統計不正批判の急先鋒ですが、これは何か、非常に不思議です。ご尊父の政権下で、その政策の結果発生を余儀なくされた不正であったということには、気づいておられないないのでしょうか。あるいはそれを承知の上で、不正を追及しているのでしょうか。

もちろん、安倍総理は官房長官として小泉政権を支えた、と書き始めて、念のため、5年間の小泉内閣の閣僚(写真入りの閣僚一覧は最下段にリンク)を調べたところ、安倍総理は、2005年(H17 )10月発足の、最後となった第三次小泉改造内閣になって初めて官房長官に就任、内閣入りもこれが初で、翌2006年9月、小泉総理退任までの11ヶ月ほどと在任期間が短いことに驚いています。安倍総理と小泉元総理とは一体化したイメージが非常に強いので、意外な事実に驚いています。となると、安倍総理に、この勤労統計不正の直接的責任を問うことは難しいといわざるをえません。小泉内閣で長期に渡って官房長官を務めたのは福田康夫氏でした。また、小泉内閣の全期間、厚労省大臣を務めたのは公明党の坂口力氏です。

厚労省は昨年も、採用労働制問題でも杜撰きわまりない不正統計を出し、国民の怒りを買いましたが、厚労省での統計不正は、ごく日常化していたことは否定しがたい事実のようです。が、その淵源は、2003年に始まった、勤労統計不正にあるのではないか。通常、各省庁の官僚は、内閣や各大臣からの指示を受け、政策実現のための具体的な段取りを作成するのが仕事ですが、本来ならば様々な調整や折衝等を経て、その政策実現の道筋を作るところ、それがいよいよ不可能になり、ついに統計不正にまで手を染めてしまったというのが、勤労統計不正の発端だったと思います。

しかしこの不正は暴かれるどころか、不正が生み出した結果は、画期的な成果だと称賛され続けました。不正統計を使うと、どれほど難しい政策でも実現可能だ、しかもその不正は暴かれることもない。となれば、この手法が幅をきかせることになるのは理の当然です。官僚にとっては、楽して簡単に仕事ができるからです。一旦、不正を容認する風潮が広まれば、当初の特定の統計のみならず、あらゆる統計に不正や杜撰さが蔓延することになるであろうことは火を見るよりも明らかです。それが現在の状況ではないかと思いす。

以上のような今回の統計不正問題の背後事情には、おそらくどこからも異論は出ないはずです。しかしなぜこの明白な事実が明らかにされないのか。おそらく、小泉元総理への批判に繋がるような事実は報道しないという、マスコミ業界内での暗黙のルールが存在するからではないかと思います。そもそも小泉総理誕生に際しては、日本のほぼ全マスコミが談合的に協調したことは、田原総一朗氏が、その旗振り役を務めたことも含めて暴露しています。内閣誕生後も、郵政解散も含めて、マスコミによる小泉内閣支持報道で、日本中が熱狂的な小泉フィーバーに包まれていたことは、今でも容易に記憶から呼び出せるほどに強烈なものでした。しかもマスコミの協調もあり、小泉元総理は、小泉改革の負の側面が露見する前の、未だ高支持率が続く中で、突如退任。小泉元総理はほぼ無傷のまま、総理の座から去られたわけです。

後に続く政権は、2008年に勃発したリーマンショックも加わり、にわかに露呈し始めた小泉構造改革の尻ぬぐいに負われまくりました。しかしここに至っても、過激な構造改革を推し進めた小泉元総理への明確な批判はほとんど登場せぬまま。それどころか、3.11以降、突如反原発論者として登場した小泉元総理は、マスコミではかなり歓迎され、今日にまで至っています。数日前には、小泉元総理の反原発の書籍まで発売されています。

以上が、今回の勤労不正統計を誘因する直接のきっかけとなった、構造改革を推進した小泉元総理をめぐる周辺事情ですが、小泉元総理はおそらく、統計不正の事実はご存じなかったと思います。小泉元総理も、統計不正をしてまで、社会保障費削減目標を達成せよとまでは、指示したことはないはずです。にもかかわらず、政策具現策を担う官僚の側で、不正という禁断の扉を開けてしまったというのが真相だろうと思います。その後の結果を見れば明らかですが、小泉構造改革は、そもそも不可能なことを、あるいは改革どころか、悪影響を招くだけの政策を無理矢理、強引に推し進めた政策であったということです。今回の統計不正は、その事実をあらためて明らかにしたものだと思います。小泉改革は、巨額の不良債権という、積年の難問を処理するという功績も残していますが、改革の大半は地方を破壊し、国民に多大な犠牲を強いるものであったことは明白な事実です。そうした無理に無理を重ねた政策が統計不正をも招いたという事実を、われわれはまず認識すべきだろうと思います。官僚批判をするだけでは、この問題の真の解決にはならないということです。

坂口元厚労大臣は、多少なりともそうした動きは知っていたはずですし、責任の一端はあるわけですが、当時の小泉内閣の責任が今の国会で問えるのかといえば、それはありえないだろうと思います。またこの勤労統計不正の結果、安倍政権下で達成したといわれている賃金上昇も、実態以上の上昇の数値が出たのは当然ですが、それは安倍政権がそのために不正を指示した結果ではないことも明白です。今われわれが考えるべきことは、今回の不正統計の誘因となった小泉構造改革が目指した、膨張しつづける社会保障費の削減が喫緊の課題であることは今も全く変わらないということです。それどころか、高齢者人口が今後ますます増加することを考えるならば、その深刻さは当時以上だと思います。しかし総額抑制という単純な政策では全く問題の解決にはならないことも、今回の統計不正も含めて小泉構造改革の結果が証明しています。

まずなすべきは、社会保障費の膨張をもたらす実態把握です。高齢者人口の増加の一言で片付けていては、実態把握にはなりません。高齢者といってもその生活実態は様々です。高齢者を個々に調査することは不可能ですが、各企業で働く高齢者の年齢別把握や勤続年数、介護施設に入所している高齢者の年齢別入所期間などの把握は容易にできるはずです。さらには元気に働く高齢者と施設に入所する高齢者という、両極端にある高齢者の調査からは、健康寿命の維持に関する知見も新たに導き出させる可能性もあるはずです。

高齢者も、自力で生活する場合にかかる生活費と、介助にかかる人件費や医療費等が必要になる老人施設で生活する場合とでは、必要な経費は3倍から5倍くらいの違いがあるはずです。増加した分は税金で補填せざるをえません。アメリカでは、社会保障は最低限度に抑えられていますので比較の対象にはなりませんが、社会保障の手厚い欧州では、日本のような高齢化と連動した社会保障費の急激な膨張は発生していません。なぜなのか。この問題を考えるためにも、日本の高齢者の実態を示すデータが必要となりますが、日本ではそうした基礎的データそのものすら存在しないという。こういう基礎的統計の軽視と、今回の統計不正とは連動していると思われますが、様々な政策の基礎的データとなる統計の軽視は、日本の後進国化を招くだけであり、日本が抱える様々な問題の真の解決を阻害するだけです。

今回の統計不正に加えて調査手法の不正も発覚しましたが、こちらは不正というよりも、いかに経費を抑えて調査を正確かつ合既刊本広告4
理的に行うのかという観点から見直すべきだと思います。本来は直接出向いて調査すべきところを郵送で済ませていたことが調査不正とされており、今後は直接調査を実施するとのことですが、直接調査への回帰などほとんど無意味では?むしろ直接調査どころか、郵送調査よりもさらに省力化すべきだと思います。このIT化時代に郵送どころか、直接調査とは!その時代錯誤ぶりには驚きの一語!費用も時間もかかります。その一方で日本政府はかなり前からデジタル政府まで開設、さらにはマイナンバー制度まで実施しているにもかかわらず、政府機関や役所の仕事の進め方はIT化とは全く逆行しているように思います。

ITを使えば、人件費も時間も一気に短縮可能なはずですが、肝心要の政府や役所で、ITの実用化がほとんど進んでいないことも今回の騒動であらためて浮き彫りになりました。それもこれもIT人材の不足、というよりも、国民全員にITの基礎知識を修得させるための、義務教育へのIT教育の導入を怠ってきた歴代政権の怠慢によるものです。政治家や官僚の大半にITの基礎的素養があれば、どういう場面でIT化が必要か、また可能なのか、その概略は即座に判断できるからです。しかし目下の日本には、そうした人材の遍在(「偏在」ではなく、どこにもいる、いたるところ存在するという意味)はどこにもありません。

専門家によれば、これからはITどころかさらに進んだAIが、エクセル並みの日常使いの技術になると明言しています。そんな中、統計調査を戸別訪問で実施するとは、信じがたい発想です。ただ統計に関しては、厚労省のみならず多数の省庁でも不正が発覚していますので、統計そのもののあり方を根本的に検討すべきだろうと思います。行革で統計職員も大幅に削減されており、統計不正が蔓延する温床にもなっているらしい。各省庁ごとに統計を取るのではなく、独立した統計局のようなものが必要だとの専門家の指摘もあります。科学的データの裏付けなしに、政治家のお手盛りでなされる政策ほど危ういものはありません。今回の事件をきっかけに、日本を名実ともに先進国として立て直すための方策を考えていただきたい。それこそが政治の責任だろうと思います。

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最後に小泉元総理についても一言。前回、日韓記者たちの談合報道でご紹介しました、北朝鮮訪朝時に小泉元総理が5人の拉致被害者の帰国に加えて、北朝鮮との戦後処理も完了させたということが、間違いなく事実であれば、小泉元総理の功績は非常に大きく、もっと大々的に報道され、称賛されて然るべきですが、事実上隠密裡に行われたのはなぜなのでしょう。訪朝時に小泉元総理が手ぶらで行くはずはありませんので、巨額の持参金を持って出向いたはずですが、そうしたお金は、たとえ税金であっても公にはせずに、秘密にできるのでしょうか。1兆や5000億円などの巨額の税金を、国会には秘密で持ち出すことは不可能なはず。秘密で持参する場合は、それほど巨額にはならないはずですが、訪朝時に持参した金額はいくらだったのでしょうか。

なお本日の話題にはしておりませんが、日韓関係に関して、なるほどと思う室谷克実氏のエッセー「泥棒と言われたら「お前こそ」と言い返せ」という韓国の言葉… この国と「話し合い解決」など無意味 をご紹介します。自民党の中には駐韓大使の召還を主張する人々もいますが、表だってする喧嘩も、日韓関係を焦点化することになり、韓国の思う壺。常識の一かけらもない韓国相手では、日本が消耗するだけです。大使もそのままにして、完全無視して、全く相手にしないのが最良の対処法だと思います。ただ、韓国が日本企業の資産差し押さえなどの動きに出れば、即座に実効性を伴う反撃が可能な準備だけは、完璧に整えておくべきことは言うまでもありません。